軽い気持ちで読める長編。先日、第一章を、本日、残りを全部読んだ。江戸の尾張藩の下屋敷の外山壮に公方様(徳川家斉)が休憩に来るため、主人公の庭師甚平が大活躍する。屋敷奉行の弾蔵は気を揉む小心者で、甚平との対比が面白い。
外山壮を愉快な公園に仕上げるため、作者はいろいろ考えだすが、言って見れば子供騙しのような話。滝の水量が変わる仕組み、お化け屋敷で鬼が現れる。岩戸の扉が自動で開く、小田原に似せた町屋敷など、エンタメ庭園である。
滝のところで大きな仕掛けがあるかと思ったが、何もなく巧く滝が落下した。家斉は愉快に思ったらしいが、その思いが読者に伝わらない。一番の山が、山になっていない。最後の場面で亡霊や狐が出るのは話を混乱させるだけ。著者は読者サービスのつもりで付加えたか。呑助の権之助も死んでしまう。どのように滝の水が落ちるか分からなかっかった。
最後に噴水の話で、今後の展開を仄めかせている処は良かった。
江戸時代に使われていない言葉、歴史考証をしていない言葉が一杯あった。どれも明治の頃の造語であるのに:
寂寥感 現在地、危機一髪、実物大、却下、設計図、根本的、脳裏、展開、認識など。
話が現代語で書かれているので江戸時代の雰囲気が出ていない。わかさぎ先生の指導を受けているのだろうか。
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