2013年5月22日水曜日

My Oedipus Complex by Frank O’Conner

  This is one of the best short stories I have ever read. The most amazing thing about this story is that the psychology of the protagonist, a five-year-old boy, is precisely described. His battle against his father over his mother is so well written that I identified myself with him (although I don’t think I had such a combatant relationship with my father). Both his father and his mother’s irritation are also described vividly.
  While reading the story, I wondered what would be the ending, but the writer finnished the story by bringing a baby, Sonny, between the boy and his father. Both of them are now hindrance in bringing up the baby. So, in conclusion they come to a truce. They are deprived of the woman they loved by the appearance of the second child.  
  This is a very persuasive ending.
  How imaginative the writer is in revealing the child’s psychology!

2013年4月14日日曜日

むかしばなし 小松左京

 設定が良い。民俗学の大学講師を背景にちらつかせ、最もらしい話に仕立て、最後にどんでん返しで、姉を殺したという事実が突きつけられる。読者は、ここで驚くが、実はこの話は二重のどんでん返しになっていて、「おかね婆さん……」のところで、婆さんのいたずら話ということがわかる。  
 知識階級が婆さんを見下し、まるで珍しい動物を観察しているような講師と大学生達をギャフンと言わせていて、小気味よい。

小松 左京(こまつ さきょう、1931年1月28日 - 2011年7月26日)は、日本の小説家。『復活の日』(1964年)『エスパイ』(1966年) 『日本沈没』(1973年) 『さよならジュピター』(1982年) 『首都消失』(1985年)

冷たい仕事 黒井千次


 タイトルがいい。冷たい仕事とは一体何かと思わせる。日常生活のほんの些細なことがこのような短編になることに驚いたと同時に、作者の観察力に敬服した。始めはしがないサラリーマンの仕事話かと思いきや、一転して、冷蔵庫の製氷機に溜まった霜の山を取り除く作業の話になる。部下の長沢と主人公が午前三時にやっと霜を取り除き終えた時、読者も達成感、成就感を味わうという仕掛けになっている。 名文: 彼はほとんど収穫の歓びに近いものを常に感じた。 彼は思わず後ろ手に冷蔵庫の蓋を締めて立った。 床の上に倒れてみせた。 がさりと音をたてて獣の肋骨を包む肉のような形の氷塊が取れたのは午前三時に近かった。 黒井千次(1932年5月28日 - )は、日本の小説家。本名、長部舜二郎。「内向の世代」の作家の一人と呼ばれる。日本芸術院会員。

2013年3月24日日曜日

牡丹 三島由紀夫

  草田の言ったことの真偽は疑問が残るが、最後にあっという毒をもってある手腕がすごい。人殺し、怨念、復讐、欺き、裏切りのような毒は物語を面白くするワサビのようなものなのであろう。毒で話をくくれば、毒が読者の体内に毒々しく入る。真似る価値のある終わり方だ。

草田のセリフ「大佐が楽しみながら、手づから念入りに殺したのは580人にすぎなかった。しかも君、それがみんな女だよ」は読者(特に男性)の想像力をかきたてる文であるが、580という数字をきちんと覚えている方が頭がおかしいのであって、これも現実味がない。

明と暗の切り替わりをうまく使っている。明では「子供たちが(略)シャツのはみだした小さなズボンのお尻を並べている」や「この洗いたての白さは妙にエロティックだね」など。暗は後半で牡丹の描写場面に現れている。例えば「重たい影を落とし」「孤独に見え」「沈鬱に感じられた」「気味の悪い生々しさ」などで、うまく最後の毒へ持っていく伏線としてある。

復讐 三島由紀夫

 近藤虎雄の秘密を読者に隠しておいて、話の最後に暴露し、読者のテンションを一気に落とすが、治子の言葉「電報なんてあてになりませんわ。きっとあの電報は、生きている玄武が打たせたんです」で、読者の不安を以前以上に煽るという展開はうまい。

 視点にかんしては、導入部から次第に近藤家の内部に入り込み、5人の登場人物の性格を食卓の会話でうまく描写している。最初の部分にある「金属的な神経質な響き帯びて、わざと陽気にしている…」のセリフで読者は釣り上げられる。また八重の言葉「警察に洗いざらひ話せばどんなに虎雄さんの恥になるかも知れないし」によって読者は謎に入り込む。計算づくの展開だ。

 しかし、よく考えると、話が現実味を欠いている。こんなことはありえないが、文章のうまさと展開の妙で読者はまんまと引っかかってしまう。実際、これは変な話だ。だいたい玄武は近藤の家を知っていて、8年間も殺しに来ないということはありえない。山口清一の目を盗んで真夜中とかにいくらでも近藤家に来ることはできるからだ。

 だから、冷静に考えれば、失敗作だ。

2012年12月23日日曜日

蛍の河


中国戦線中のある出来事を体験談としてではなく、小説として発表した。文体に無理がなく、凝った言い回しがないので、そのまま素直に読んでいける。 小隊長安野の性格描写(自分を頼りにしている、部下思い、このため古参兵に慕われる)、安野と自分との関係の描写が巧み。導入部分でなぜこの話を書くのかを説明しているため読者は納得して読み始められる。(ポーの「黒猫」の手法) 最後に擲弾筒が河の中から見つかり、ハッピーエンドになっていて、読者は救われる。 原稿用紙40枚ぐらいで直木賞をとっている。

2012年12月9日日曜日

海鳥の行方 桜木紫乃

 話の構成、伏線の張り方がうまい。読者に期待をさせておいて最後にその逆をエンディングにしている。読者の気持ちを見透かしている。  具体的には、まず山岸里和が紺野に対して「こいつと戦おう」と読者に話の行方を暗示させる。紺野は暗示に応えるように「おめえみたいなのは、すぐぶっ壊れる」と言う。里和の心に空いた空洞を「仕事で埋めよう」と思う。石崎と釣りをしていて竿の先に「衝撃的な記事がうようよしている」と読者を誘い、最後の場面で石崎(和田)が別れた妻から聞き出す言葉で記事を締めくくれば最高の記事になると思わせる。ところが、「当てる」ことができずに、何も聞かずに最後の場面で「ぶっ壊れる」。 里和が新聞記者を辞めるのか続けるのかはわからない。多分棒に振るであろう。 桜木紫乃(さくらぎ しの、1965年4月 - )は、日本の小説家。北海道釧路市生まれ。釧路東高校卒業。江別市在住。直木賞候補、オール讀物新人賞