2017年6月25日日曜日

満月の如し 仏師・定朝  澤田瞳子

 仏の真の尊容がどういうものか知りたいがゆえに、定朝は中務が殺されることに加担する。中務は死ぬ間際、愛する敦明親王のことを思い、かすかに微笑んで死んでいく。この死顔こそが、まさしく仏の尊容だとして、中務の顔を平等院の阿弥陀如来像に映す。   発想は素晴らしい。定朝が求めていた仏の顔を中務に見たのである。   似たような話があった。芥川の「地獄変」。絵師が牛車の中で焼かれる様を描いた話。定朝も絵師良秀もどこか狂っている。