2015年9月30日水曜日

The Luck of Roaring Camp by Bret Harte

This is a strikingly interesting but sad short story. It is interesting because the camp full of outlaws turn into a “sacred precinct” with people who wear clean clothes and wash their faces twice a day thanks to the arrival of a baby, who is christened under the name of Tommy Luck. Roaring camp becomes whispering place where Man of War Jack sings a lullaby consisting of 90 stanzas to The Luck. Everybody loves the baby. Above all, Kentuck, whose finger is caught and is held “fast for a moment” by the baby, loves him most. It is sad because in the end, “the pride, the hope, the joy, the Luck, of Roaring Camp” dies held by Kentcuk in a flood. They “drifted away into the shadowy river that flows forever to the unknown sea.” How poetical the ending is! Hart knows how to handle words; she uses formal words where colloquial expression does, like “Profanity was tacitly given up in these sacred precincts.” A happy ending is good, but a sad ending can impress the reader more.

2015年9月19日土曜日

戦後短編小説再発見1 完全な遊戯 石原慎太郎

くだらない話だ。読んだ後何も残らない。気違い女を散々犯して、最後は崖から落として終わり。何というあほらしい話だ。作者の欲望を満たすため、話の中で都合のいい女に仕立てただけの話だ。感動がない。これで短編小説と言えるのか。渡した名刺から電話番号がわかるというのも都合がよすぎる。

「フロントガラスがいつの間にかまた薄く曇り始めた」~「横の灰皿で煙草をひねりながら武井が言った」 1957年 原稿用紙72枚分

2015年9月18日金曜日

戦後短編小説再発見1 眉山 太宰治

実に愉快な傑作。何度も笑ってしまったが、最後はほろりとさせられた。 起承転結が上手く出来ている。まず飲み屋の女中トシの登場。トシにまつわるエピソード(眉山のいわれ、大洪水、味噌と糞)、転で、腎臓結核で里に帰った。結で、河岸を変える。 文章が滞るとこなくスラスラ読んでいける。会話も生き生きしていて無理がない。トシの人物描写が優れている。 「これは、れいの飲食店閉鎖の命令が、未だ発せられない前のお話である」~「僕たちは、その日から、ふっと河岸をかえた」 400字詰原稿用紙換算、28枚 1948年

2015年9月17日木曜日

カエサルを撃て 佐藤賢一

 全然面白くない。カエサルとヴェルチンゲトリクッスとの戦いであるのに、両者の戦略、戦闘の過程が理解しにくい。またカエサルの人物像が描かれていない。ヴェルチンゲトリックスもどういう人間かが描写されていない。両者の性格を表す生きた言葉が皆無に近い。カエサルを情けない人物に描き、ゲトリックスを乱暴な、短絡的な荒くれに描いている。表現が乱雑で、落ち着いた文体ではない。「……」の部分が多すぎる。発話がありきたりの台詞で生きていない。400ページほどある長編だが、ゲトリックスの女好き話が多すぎる。マキシムにしても、ゲトリックスにしても、言葉使いが馬鹿とか、馬鹿野郎とか汚い言葉使いが多すぎて、下品な小説だ。カエサルの弁舌とかゲトリックスがいかにして部族をまとめたかを読者に納得させる箇所がない。そのための演説もない。  文体も短文が多すぎで、歴史小説としての重みがない。大体ゲトリックスがカエサルの妻を拉致してくる話もいい加減なものだ。  アレシアの戦いでもあれほどガリア軍が優勢であったのにシーザーの登場で激変するのはおかしい。救援軍の敗退も説明不足でよくわからない。 語り手がカエサル、アステル、マキシムス、ゲトリックスなど視点が変わるので、小説全体として落ち着かない。  下品で、表層的で、人間の奥底の心理をえぐっていない、話がわかりにくい。歴史小説になっていない。直木賞受賞作家が書いたものとは思われない。  最大の欠点:カエサルはゲトリックスを本心ではどう思っていたのかが描かれていない。ブルータスはげトリックスの助命を願いでるが、カエサルの反応が描かれていない。

2015年9月6日日曜日

異邦人 カミユ

 ごく平凡で、退屈な話がどんどん発展していき、特に訳もなくアラビア人を殺した主人公が極悪罪人として死刑を宣告される。司祭の祈りを断り、怒りをぶちまける。心は浄化しギロチンにかけられる。 検事の大げさな弁論で次第に極悪人に仕立て上げられていく様子(不条理がまかりとおってしまう)がよく分かるように語られている。最後のクライマックス、大団円は強烈なインパクトを与える。