2020年4月20日月曜日

火天の城 山本兼一

松本清張賞受賞作品として読んだ。
作法は、章ごとにいろいろなエピソードを提示してある。この章は石垣の石の話、この章は木材を切り出す話、その他、番匠間の争い、岡部又衛門と息子の以俊(もちとし)のいがみ合い、以俊と女、耶蘇教の神父、安土の土地、又衛門の落下の怪我などなど。
しだいに細部を攻めていって、ジグゾーパズルを完成するように、安土城を上げて築き上げていく。最終仕上げは狩野家の絵かきで襖に描かせる。
フィクションとして面白いのは、壁が重くて心柱を四寸切り出す場面。地下蔵に火薬が仕込まれ爆破すすると城が崩れるという仕掛け。
伊賀と甲賀者が城を狙っているのに、なかなか仕掛けないのは筋としては変だ。
章ごとに話を区分けするのはいいが、バラバラで統一性が取れていないが、こういう書き方しかないのだろう。
最後の場面、明智光秀が謀反を起こしてからの展開がハラハラドキドキであった。一体、城はどうなるのかと思った。安土城跡に登ったことがあるが、小高い山があるだけで、何の城の形跡もない。一読者として著者と一緒に城を造ったような気になっており、燃えてしまうのはいかにも残念に思った。三年もかけて築城したのに一夜で燃えてしまうとは、悲しく惜しい。織田信雄が親父信長のやり方が気に食わなかった(坊主憎けりゃ袈裟までも)ために、城が燃えてもいい気味だと思ったというフィクションも効いていた。
それにしても、著者山本兼一は巻末にあるように多くの書籍を読み、多くの人から取材しているのには感服した。山崎豊子流の取材だ。

2020年4月18日土曜日

The Fly by Katherine Mansfield

How cruel a human being can be! He has lost  his son and knows how grievous it is to lose one's own son, yet he literally kills the fly. A cruel deed. The bad and angy impression remained for a while after finishing reading the story.

2020年4月11日土曜日

古都 川端康成


キャラが立つとは、こういう書き方かと思った。苗子の気持ちが手に取るように、心が痛くなるほど、じんじんと響く。同じように、千重子の心情も良く分かるように書かれている。

話の設定がうまい。双子の一人は山育ちで、もう一人は京都の呉服屋のお嬢さん。その二人が偶然神社で遭遇する。苗子は常に千重子を「お嬢さん」と呼び、大事にしている。千重子は捨子なのだ。そこに織物屋の秀男が登場して「幻」の苗子に結婚を申し込む。なんという奇抜な話の展開。著者は秀男が誰と結婚するかは語らずに話を終えている。あとは読者の想像に任せるというエンディングだ。

秀男が苗子と結婚しても、千重子と結婚しても、いずれにせよ、他方がどう思うかが問題である。千重子と結婚するようなニュアンスで終わっているが、苗子はどう思うだろうか。運命のいたずらにしては大きすぎる。

二株のすみれの花が、二人を象徴しているようで、うまい小道具の使い方である。

ただ、「古都」は半分が京都の寺社、風物、祭り、伝統、それに呉服のことなどの説明が多くて、初めのうちはなかなか話が進展せず、退屈であったが、二人が神社で会ったところから、急に話に弾みがついてpick up momentum、あとはどんどん読み進めた。京都の風物紹介型小説。

2020年4月8日水曜日

The Poor Relation's Story by Charles Dickens

   After reading the story, I did not comprehend the deep meaning and grand scheme provided by Dickens. In fact, I did not understand why Dickens worte such an intricate story. However, thanks to the study essay written by Professor Mamoru Kadota, I understood the story very well and was amazed at Dickens grand design.

The story develops this way:

1.    The protagonist first tells a story which sounds true but it is embedded with a few skillful lies.

2.    He suddenly denies the story by saying “The story I have so far told you is a lie.”

3.    He then proceeds to tell a second story that sounds true, but this is again a lie, a bigger lie, that is 180 degrees opposite to what really takes place around him. The story, however, describes how his dream has come true.

4.    In the end he finishes his story with a punch line that tells his second story is also a lie.

       The writer is behind the scene and manipulates the protagonist AND the readers. The readers will wonder what is true and what is fake. This true-or-fake story is up to date reflecting the present world full of fake news




2020年4月7日火曜日

白壁の樹の下で 青山文平

最初の道場破りの場面は面白いが、その後の展開がのろくて、退屈。全然のめり込んでいかない。しかし、登の恋人が殺されてから、急にのめり込み、筋を追っていくようになった。
特異な点
〇一つの文章ごとに、改行しているが、改行し過ぎではないか。分量を増やすためか。
〇刀を取り返すために人を殺めるだろうか。
〇登の剣道仲間が次々殺されることによって、読者をひきつけている。
〇剣術の技の描写が巧みだが、著者はどのようにして、技を調べたのか

2020年4月6日月曜日

西の人気男 「シング戯曲全集」

西の人気男 「シング戯曲全集」

芥川龍之介が「鼠小僧次郎吉」を書いたが、彼はこの話を「西の人気男」を読んで着想を得て書いたそうだ。読むとなるほどと思った。
俺は父親を殺したと威張る男が村人から格好いい男ともてはやされ、若い女や婚約中の女性も彼をほめそやすが、殺したはずの父親が現れて、法螺であることがばれ、女や村人からさんざんな目に合う。
芥川の鼠小僧次郎吉も「俺はかの大盗賊だ」と法螺を言い放題で、宿の亭主や小僧たちは偽次郎吉をもてはやすが、その偽男の話をしていた男こそが本物の次郎吉であったのだ。
「シングの戯曲」からヒントを得て、時代と場所をすっかり変えて、エンタメとしてはよくできた話に仕立て直した芥川に敬意を表したい。