2018年12月27日木曜日

黒衣の僧 チェーホフ

凄い話だ。狂人を凡人が“治療”で凡人にしてしまうと、狂人が抱いていた幸福感が消滅し、逆に失望感にとらわれる。治療前までのコヴリンとターニャの関係、またコヴリンとターニャの父の関係は最も好ましい関係であったが、治療後は最悪の関係になる。立派な果樹園が、最後には荒れ果てて他人に売り払われるのはその典型例。
最後に黒衣の僧が現われて、コヴリンが再び至福を味わい死んでいくのは心を打つ。展開の仕方が見事。