2020年8月26日水曜日

太陽の棘 原田マハ

 沖縄に派遣された精神科医エドワード・ウイルソンと沖縄のニシムイという村に住む沖縄人の画家集団との心温まる親交の物語。後半まで平凡な話が淡々と続くが、後半から、特に、元飲んだくれのヒガがメグミを助けるため米軍将校に暴力的にメチルアルコールを飲まされて失明寸前の重症になるところから、急展開し、一気に最後まで読んだ。

多くの思い出を胸に抱いて、エドは沖縄を離れ貨物船で米国に帰ることになるが、甲板から沖縄の島を見ると、ぴかぴか光るものが舟に向かって照射されている。エドはニシムイの画家に鏡を送ったことを思い出す。最後の場面はほろりとさせられた。

最後の見せ場を見せるためにそれまでの淡々とした下地がうまく機能している。

実在人物にインタヴューして書き上げた。

本の表紙と裏表紙に肖像画があるが、表はエドの肖像画で、裏はタイラの自画像らしい。しかし、この絵は邪魔だ。読者を惑わせる。misleading!

どうせ、肖像画を載せるのなら、一番激しい登場人物、ヒガが書いた肖像画を載せるべきだ。私は、裏表紙はヒガが描いた自画像とばっかり思って読んでいたが、そうではなかった。読者の先入観を操作してはいけない。