吉原を創った甚左衛門の妻・花仍が吉原の遊女屋の女将として吉原を築いていく話。
若菜太夫を育て上げ、若菜の赤子を育て、赤子が成長して二代目の女将、鈴になる。花仍は引退して、大女将になり、甚左衛門、使用人清五郎、遣手婆のトラ婆も他界し、吉原は新しい世代と交替する。花仍の曾孫が生まれ、花仍も死んでいく。
花仍の半生を描いた。
江戸幕府との遣り取り、江戸の火災、吉原の引っ越し、歌舞伎者や湯屋との確執、吉原の同業者との駆け引きや、その他もろもろのエピソードを織り交ぜて展開していく。どのように吉原が発展していったか、その影の苦労が分かるように描かれている。
花魁の衣装、客のあしらい方、同衾、遊女屋の中の様子、花魁道中の様、女衒、遊女の親の金の無心。磔、花魁言葉、江戸時代の時代背景など詳しく調べ、作品化している。文章もうまい。
吉原ができていくに従って、花仍が年を取っていく様が描かれている。吉原の完成がこの本の眼目ではなく、花仍がどう生きたかを描くのが眼目。
大きな問題が最後に解決するというドラマでなく、エピソードごとのドラマ形式。
花仍の人生、いろいろあったなぁという印象。寄せ集めのエピソード集で、感動はしなかった。
花魁言葉
そう願いいす。わっちが帰ってくるまで。分りいしたか。禿が「あい」と応える。おおせになりいしたね。届きいすよ。仕方ないことでありいすよ。男でありいしょうか。尋常でありいすね。できいせんか。「ます」が「いす」に替わる。
女衒が連れてきた娘の身形、丈の短い単衣、肘から先や膝下が剥き出し。娘の値段、三両から五両