2019年4月4日木曜日

「ユダヤ鳥」 バーナード・マラマッド

「ユダヤ鳥」は奥の深い短編で、一筋縄ではいかない。単なるユーモア小説と思って読んでいたら、そうではないのだ。最後の一行の「ユダヤ迫害者たちに」というイーディの言葉は、話をひっくり返す。実はコーエンはユダヤ人で、コーエン一家(イーディとモーリー)はユダヤ系米国人だ。それは、47ページで鳥が祈りはじめると、「イーディは頭を垂れ」「モーリーは祈りに合わせて身体を前後に揺らし(祈りの動作)はじめ」ることで分かる。
 なぜユダヤ人であるコーエンはユダヤ鳥を殺したのか。ここで私は頭が混乱した。昨日ネットで調べてみると、「ユダヤ人の反ユダヤ主義者」とか「ユダヤ人を忌み嫌うユダヤ人」がいるという。いわゆる自虐か。ユダヤ人がナチスによって劣等民族と烙印を押されたことで、そう思い込んでいるらしい。ユダヤ人であることが嫌で、嫌いなユダヤ鳥を殺したという訳か。(この辺はユダヤ人が読むと実感するかも)
 ちなみにユダヤ人の名前の由来をネットで調べたら、コーヘン(Cohen)はユダヤ語で「聖職者」という意味で、またシュヴァルツ(Schwartz)は「黒」という意味だ。(作者のマラマッド(Malamed [Malamud?])は「教師」)。
 我々、日本人が外国の本を読むことは、背負っている文化が違うから、きちんと読めないことを痛感した。

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