1937(昭和12年)、すなわち昭和16年の対米戦争に突入する4年前の発行で、いわば軍国主義が台頭しつつあるとき、日本の少年少女に古今東西の知の世界を知らしめるべく「日本少国民文庫」全16巻を出版した山本有三、吉野源三郎、その他の著者と出版した新潮社に敬意を表したい。
「君たちはどう生きるか」は倫理を説く話であるが、著者は道徳臭くならないように、コペル君を主人公にした物語風にしあげ、コペル君の叔父さんがいろいろ人生のことを教えてくれる形式になっている。この手法がいい。
私は三点が印象に残った。
①
豆腐屋の浦川君の話。
私の家は曽祖父が岐阜県の味噌醤油醸造業で、父が三代目である。私は「味噌屋の子」であることが嫌だった。汚らしくて味噌臭く、会社員の子のほうがいいと思っていた。あの頃、浦川君が物を生産し、人のためになっている、ということが書いてあるこの本を読んでいれば、そんなに味噌屋を卑下しなかったかもしれない。
②
コペル君の裏切り
コペル君は友達がいじめられているのに、隠れていたことを後悔する話があるが、私は現職教師のとき、いじめの問題をきちんと指導ができなかったことがあり、今でも後悔の念にかられることがある。
③
仏像のこと
私は歴史が好きなのに、仏像をギリシャ人が造ったということは知らなかった。日本から古代ギリシャに繋がっているという古代世界にいざなわれた。
戦前にこのような素晴らしい本を読むことができた少年少女はごく僅かだと思うが、彼らはラッキーだった。
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