出だしから登場人物の人間関係、背景、出目など錯綜して混乱した。途中から相関図を書き、ウィキペディアで調べたりして、やっと軌道に乗った。最後の100ページぐらいから筋が楽になり、のめり込んでいった。
長所
設定が巧みである。
秋山が「三浦家譜」を著わすことにより、様々な登場人物の背景が分かってくる仕掛けになっている。
戸田秋谷が10年後に切腹することになるが、庄三郎が秋谷に会ったのは余すところ三年であった。著者は三年間の成り行きを書けばよい。読者は次第に切羽詰まって来る
日記「蜩ノ記」の著述によって、事件の真相が次第に明らかになるように仕掛けてある。
家老・中根兵右衛門と戸田順右衛門との確執が実は根幹にあったことが最期に分かる仕掛け。
最後に秋谷の切腹で終わるが、その前に息子郁太郎が元服し、庄三郎は薫と祝言を挙げる、のも読者は一安心する。
最後に、秋谷はひょっとして助かるかと思わせる要素もあるが、家老は、秋谷が切腹する意味を語ることで読者も納得する。
欠点
お由と交わったという噂を流した場面がない。
10年後の切腹は無理がある。
秋谷の性格が冷静過ぎる。
宣伝文では、最後に庄三郎と秋谷の間に深い絆ができるように書いてあるが、なかった。なくても良いが。
文章は一流。情景描写、心理描写、神の視点で書いている場面多し。
直木賞を取るにはこれぐらい込み入った話を作らなければならないのか
0 件のコメント:
コメントを投稿