2025年10月21日火曜日

Village 113 Anthony Doerr, published 2011

 This is a sad story. Those who had to leave their hometown because of the construction of a huge dam must have felt lonely, sad, and heartbreaking pain in their hearts. Even having to leave your hometown for just a few years makes you unhappy, it is countless times sad if your town is underwater and disappears forever. 

The seed keeper woman, at the end of the story, seems to suffer from Alzheimer's disease, forgetting things in the past. That may be a way of happy ending.   

The novel is so full of poetical sentences and metaphores that it was difficut to understand it well. However, gradually, toward the end of the story, I began to appreciate his style. 

The write, Anthony Doerr is a Pulitzer Prize-winning author.

 Has he visited the dam construction site in China to collect the material for the story?

It would be interesting to describe in a novel how people in Tokuyama felt when the Tokuyama Dam was constructed. They moved the cherry trees to the top bank of the dam from their village to appreciate the beauty of the cherry blossoms they enjoyed while the village was not underwater.

2025年10月20日月曜日

光秀の定理 レンマ  垣根涼介

クイズを解くような展開の小説。愚息と言う坊主が大道で四つのお椀にサイコロを入れ、客にどの椀にサイコロが入っているか当てさせる賭けをやっている。客が一つの椀に決めると、坊主は他の二つの空の椀を開け、残り二つのうち、どれかを当てさせる。どちらかにサイコロが入っているから、確率から言えば五分五分であるが、何度も賭けをやっていく内に、坊主のほうが有利になって行く。摩訶不思議なクイズであるが、この話が延々と400ページある小説の半分ぐらいを締めている。詰まらん小説だと思っていたが、後半は引き込まれた。

光秀が信長に命ぜられてある城を落とす場合落とす道は四つあり、どれを選ぶかで、愚息の指示に従って城を落とす。タイトルと明智が結びつく。調べると、これはアメリカのクイズ番組“Let’s Make a Deal”の司会者名を取ってMonty Problemと言う。この場合は、扉が三つで、当たりは車、外れは山羊らしい。

著者はこのMonty Problemを400ページ余もの小説に仕上げた。着想から壮大な小説を生み出した技に感服。最後の章では、なぜ明智が信長を討ったかについての愚息の意見が述べられる。普通のミステリーとは大違い。

 私はMonty Problemが分かるようで分からない。 レンマとは補助定理らしい。

In mathematics, a lemma is a helper theorem—a smaller proposition used to prove a bigger one. It’s like a stepping stone across a river, helping you reach the main proof.

2025年9月17日水曜日

商う商人 江戸商人・杉本茂十郎  永井紗耶子

 「木挽町の仇討ち」が、読み応えのある小説であったため、同じ作家の「商う商人・杉本茂十郎」を読んだ。これも良くできた小説である。

江戸の商人の問屋仲間と株仲買人と菱垣廻船を統括し、江戸の町民のため尽力した杉本茂十郎の物語である。

「毛充狼(もうじゅうろう)の渾名を持つ茂十郎がいかに気風がよく、度胸が据わっており、大物商人であるかを読者に巧みに伝えている。シャーロックホームズのワトソン宜しく、茂十郎の人となりを、堤弥三郎が語り手となり、その活躍ぶりを微細に語って行く。

茂十郎が死んで20年後に老中水野忠邦に語るという手法を上手く用いている。

永井さんの小説は無駄がなく、どの文章も無理なく読んで行ける。展開も無理がかない。頭に入りやすくしてある。作家はこういう文を書かなければいけない。

巻末に参考文献として25冊ほどの文献リストがある。そこからこのような作品を生み出す手腕は大したものだ。

2025年8月11日月曜日

木挽町のあだ討ち 永井紗耶子

 話の造りが上手い。結末を先に考え、後から前の章立てを考えたよう。五章それぞれの語り口が、その人物になり切って、流れるように喋る。文章が上手い。次が読みたくなる。終章で、総一郎が登場するが、面食らった。

偽物の首を本物と入れ替えるが、早々と察しがついた。その通りの結末になっていた。

女性作家であるからか、水も漏らさぬように、全ての漏れ口を塞ぐように話を展開させている。執筆中、ありとあらゆる可能性を考え、対策を文字にしたのだろう。

偽の首が小説のように上手く入れ替わるか、見破られないか、と思ったが、著者は用意周到に丁寧に穴を塞いでいた。あそこまで書かれれば、まあOKという事だろう。

話しの構成、落ち、我天下一品。推理小説でもない、読者を嵌めこむのに長けた小説。上手くできていた。小道具や、殺陣師、瓦版屋など、それぞれの職業を上手く使った。木挽きとは首を切り取ることに掛けて題名にしたか。

2025年7月31日木曜日

天涯の海    車浮代

 半田市のミツカン酢がどのように創業されたかが、史実を元にフィクションを交えて書かれている。

著者は膨大な史料を元に月刊誌「パンプキン」に二年間にわたり連載した小説である。

中野又左衛門三代を章ごとに纏めて描いた。酒粕から酢を独立させ、江戸で販路を広げ、次第に繁盛していく様子が描かれている。史料を相当読み込んだと思われる。

家系の繋がりが、ややこしくて、そちらに重点が置かれている場面も多、退屈で退屈であった。むしろ、そこは簡略にして、如何に酢を売れるようにしたかを書いて欲しかった。書いてはあるのだが、説明が多く、目に見える描写が少ないページが多かった。Don't talk but show.

荒筋で話が進んで行くのが多かった。しかし、描写を詳しく描くと、ページが多くなり、妥協するしかないか。

世代が変わってもなお今日まで続く基礎を作った創業者たちの苦労が分かった。

私の実家、大垣の味噌溜屋「小橋口清水屋」で、ミツカン酢を売っていた。こんな歴史があるとは知らなかった。

早亭北寿(北斎の門人)の弁財船の表紙がいい。

2025年7月19日土曜日

まいまいつぶろ  村木嵐

 家重の言葉が不明瞭のように、この本の正体が不明瞭。

まず、主人公が誰か分からない(感情移入ができない)。主人公は、家重か、越前守か、意次か、お幸か、忠光か。

次に、時代考証が欠落。例えば、比宮が没してからもお幸は尼にもならず、京にも帰らない。三年後に家重の側室になる。これはあり得ないだろう。また、家重が自分のことを「私」と言っている。『日本国語大辞典』よれば、「私」は、「近世においては、女性が多く用い、ことに武家階級の男性は用いなかった」とある。さらに、「家重が将軍を宣下した」は「宣下」の誤用法である。

第三に、話しの辻褄が合わなくない。例えば、家重が「忠光を遠ざけるくらいなら、私は将軍を……」と言うのを、10歳の家治が「忠光を遠ざけよう。権臣にするくらいなら。私は将軍ゆえ」と解釈するが、忠光の言葉と家治の言葉が合致していない。

第四、平田靱負の自刃に触れる場面があるが、幕府の重役は靱負の苦悩を表面的にしか描いていない。

最後に、致命的な欠陥。読者は忠光の心が、どのようであったか知りたいのに、忠光の心理描写が欠落。忠光は通訳しながら、どのように考えていたのか、一言も触れていない。忠光の心の葛藤が知りたい。表面で、なぞってあるだけで、これも「ないないつぶろ」であった。


発音


"わたし【私】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2025-07-19)


2025年7月9日水曜日

Snow, Blood, Love by Ami Cameron, published 2018

 This is an excellent short story. The setting is good. An unexpected ending is good. Grandma's love warms your heart.

Because Jessica's grandma's house is decorated with does, the protagonist, Jessica, is familiar with guns. That's why Merideth's husband is shot to death. Grandma tells Jessica to let it go that she doesn't have anything to so with the murder. In the end Grandma reveals her crime to police by way of a letter.  Her crime has been carried to another world. "Good riddance" was the words Jessica's relatives say. So, nobody was responsible for his death. Jessica will have to carry the secret to her death. Grandmother's love for her daughter was so great that she killed her husband. 

The dream scene is too vivid. A dream is vague and normally vague, but this story depcts Jessica's dream vividly and clearly. That is against reality.

In the end, Meredith had something to do with the murder. That was a surprise. 

Logical and natual develoment of the story. Well written. 

The writer says, "Being authentic and real is important to me. Being fake just isn't an option." Her description of Jessica's dream is unreal.