2009年11月23日月曜日

シャルル・ルイ・フィリップ 「アリス」

 それまで母親に可愛がってもらっていた7歳のアリスは、弟が生まれてから母親の愛情が赤ん坊に注がれ、嫉妬する。実は、アリスの後から3人も赤ん坊が生まれたのだが、1週間もたたないうちに3人とも死んでしまっていて、アリスは赤ん坊は死ぬものだと思い込んでいた。だから、今度の弟の誕生もそんなに気にしていなかったが、1週間たっても死なない。アリスは嫉妬で食事を摂らなくなり、「赤ちゃんが死なないのなら、あたしが死ぬ」と言ってアリスは、ある日椅子に腰かけたまま死んでしまう。  話の展開が、ごく普通の事から導入されていき、次第に読者のテンションをあげて行き、を結末はどうなるのか(死ぬのは弟か、アリスか)最後を知りたくて急いで読もうとさせるサスペンス力がある。やはり、コンフリクトの展開の仕方で、作者は読者はをどうにでも操れる  また、チェーホフの「眠い」で、最後に少女が赤ん坊を殺してしまうが、「アリス」同様、読者は意外な結末に驚くのだ。 問題点1 変な翻訳「妻は4年の間に3人の子供を産んだが、」の「妻」はおかしい。これでは話し手が夫になってしまう。しかしこの小説の視点は神の視点になっているから。 問題点2 変な翻訳「かわいそうにこの子はある事件のために死んでしまったのだ」は、おかしい。これではアリスが最後には死んでしまうことをばらしてしまっている。サスペンスの途中に、著者が結論を暴露してしまうはずがない。ここは多分「かわいそうに、この子はある事件のために心を病んでしまったのだ」ぐらいの訳ではないか。 シャルル・ルイ・フィリップ Charles-Louis Philippe 1874年生まれ。フランスの作家。セリイという小さな町に木靴職人の子として生まれる。リセ卒業後パリに出て、市役所勤めのかたわら創作活動。娼婦との同棲体験から生まれた小説『ビュビュ・ド・モンパルナス』を発表。ラルボー、ジッド、エリ・フォールらと交友をもつ。夭折の晩年、ジロドゥーの依頼によって「ル・マタン」紙に書いたコントが、本書と『朝のコント』として死後出版された。日本での人気は格別である。1909年没。

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