2012年1月9日月曜日

DH ローレンス 「木馬の勝ち馬」

1.この短編は寓話として読みました。少年ポールは、母親から「お父さんは運がない」とか「もっとお金を」と言う言葉を聞いて、母親の嬉しい顔を見たいがため、木馬を駆り立て勝ち馬を当てるという運の強い子になりますが、母親は金が入っても「もっとお金を」と求める。ついにポールはダービーで勝ち馬を当て「僕には運があるんだよ」と言いますが、勝ち馬と自分の命とが引き換えになってしまいます。 母親の期待が大きいと、期待に沿おうとする子供はその負担に耐え切れずに生命をも犠牲にしてしまうという教訓話を描いたのではないかと思います。 2.以下のような解釈をする批評家がいましたので、参考までに付け加えておきます。 ピュリッツアー賞受賞者でアメリカ人のガードンズという詩人は「木馬の勝ち馬」に関して次のように言っています。 すなわち、399ページの「汚れた運(ラッカー)」と「汚れた銭(ルーカー)」は、原文ではluckとlucreで、これはloveという言葉に似ている。ポールは、運が強くなって父親にとって代わりたいと願うが、これはエディプスコンプレックスの現れである。 3.事典によると、エディプスコンプレックスとは、母親を手に入れようと思い、また父親に対して強い対抗心を抱くという、幼児期においておこる現実の状況に対するアンビバレントな心理の抑圧のことをいう。フロイトは、この心理状況の中にみられる母親に対する近親相姦的欲望をギリシア悲劇の一つ『オイディプス』(エディプス王)になぞらえ、エディプスコンプレックスと呼んだ。 4.「木馬の勝ち馬」の底辺にはエディプスコンプレックスがあり、単なる教訓話ではないようです。浅薄な読解力を思い知らされました。

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