2013年5月31日金曜日

落ちてくる! 伊藤人譽


病室の老婆が、ベッドの上の電灯の傘が落ちてくると心配していると、本当に落ちてきて胸に傘の凹みができる。一方、孫はお婆さんのお金で買ってもらったグローブでボールを空に放り投げて受け取る遊びをする。ボールが「落ちてくる!」ということで、二つの話を結びつけている。
 発想がおもしろいし、結びつけ方が面白い。しかし、疑問に思うのはベッドの上の電気の傘が落ちてきたとき、なぜ老婆の胸が丸く凹んだのか。普通円錐形の傘が落ちてきたら、傘の周りの部分だけ胸に当たって胸は丸い跡が残るだけのはずだが。それとも傘がひっくりがえっており、でっぱている方が下向きになっていたのだろうか。
 
伊藤人譽 1913- 昭和時代の小説家。
大正2年3月21日生まれ。昭和18年「文学界」に登山をテーマにした小説「岩小屋」を発表する。同人誌「小説界」「文学四季」などに参加。戦後の作品に短編集「登山者」「ガールフレンド」,長編小説「猟人」などがある。東京出身。アテネ・フランセ中退。本名は隆幸。

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