2014年5月15日木曜日

最後の一句 森鴎外

いろいろ難点がある短編だ

① 最後の段落「城代も両奉行も・・・」はそれまでの文の流れから考えると、速くて分かりにくい。特に日付や大嘗会関係の説明がごちゃごちゃして分かりにくい。どうしてこんなに急いで終わりにしてしまったのかわからない。

② この短編の言わんとするところは何か。身を捨ててでも親孝行せよということか。それとも「お上」に対する皮肉か。お上に対する皮肉なら、内容をそれに焦点を当てるべきではないか。親孝行の話でちくりと刺すのも手ではあるが、お上のデタラメな政治を展開しておいて、刺す方が読者は納得するのではないか。

③ 姉のいちは、「長太郎は血が繋がっていないし、跡取だから殺されないほうがいい」と妹に話しているのに、出かけるときに長太郎が起きて「大事な御用でそっと行って来る所があるのだからね」というと、長太郎が「そんならおいらも行く」といったとき、「じゃあ、お起き」と言って一緒に行かせるが、これはいちの性格から言って矛盾していないか。「お前は寝ていなさい」と言うはずなのに、なぜ「じゃあ」と言って、長太郎も連れて行くのか。

④ 語句の使い方が不明瞭。特に最後で、「いちの願意は期せずして貫徹した」とあるが、貫徹とは100パーセントという意味であるから、父親が助かる代わりに子供が5人とも殺されたということになる。が、どうも父親は追放になったようだ。「貫徹」は読者を惑わす語句ではないか。

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