2015年4月26日日曜日

娼婦の部屋 吉行淳之介


  私の好みに合わなくて、面白くない。なぜか?

1.      だらだらと話が展開していくため、読者を引っ張っていかない。。

2.      情景のイメージが湧かない。心理描写が理屈っぽくて感情移入ができない。

3.      文章表現が平凡で特に優れている印象はない。

4.      主人公が魅力のある男性でない。最後に主人公が言う台詞「そうか、元気でやりたまえ」はないでしょ。主人公は秋子によって、毛を毟り取られたような気持ちが、回復して人間らしくなって部屋から出ていたという恩義があるのに「ばあさん」になったとなると、簡単に捨ててしまう冷淡薄情さ。

5.      最初の学生服でのインタビューの話全体の意義がわからない。骨相学についての展開があるかと期待したが、そうでもない。

ほめるとすれば、3年のうちに主人公は秋子に対して心が変化していくが(「この町は私を必要としなくなっており、私もこの町を必要としなくなってしまった」)黒田の秋子に対する態度が不変であることのギャップが面白いと言えば面白い。

春琴抄 谷崎潤一郎


春琴抄 谷崎潤一郎(1886-1965)79歳没 昭和8年発表
 
1.虚構を事実であったかのようなトリックを巧みに取り入れている。その巧みな仕掛けは:

  出だしの墓の風景、虚構の「春琴伝」への言及と引用、語り手が取材した照女、春琴が作曲したという「春鶯囀(しゅんのうでん)」や「(むつ)の花」、天竜寺峩山(がざん)和尚の言葉など

2.キャラクター作りの巧さ。佐助の献身的な奉仕の姿勢。春琴のわがまま、気がきつい気性、高慢さが一貫している

3.心理および情景描写が優れている。

4.大阪弁を巧みに取り入れて単調な文体に変化をつけている

5.プロットづくりの巧さ。起承転結が見事になされている。転は春琴の顔が醜くなりやがて佐助が目を潰すところ

6.わざとだが句読点がないので読みずらい。

7.浄瑠璃と鶯に関するのうんちくが長すぎる。
 
昭和の読者は事実に基づいた作品だと信じ込まされて読んだであろう