2015年9月17日木曜日
カエサルを撃て 佐藤賢一
全然面白くない。カエサルとヴェルチンゲトリクッスとの戦いであるのに、両者の戦略、戦闘の過程が理解しにくい。またカエサルの人物像が描かれていない。ヴェルチンゲトリックスもどういう人間かが描写されていない。両者の性格を表す生きた言葉が皆無に近い。カエサルを情けない人物に描き、ゲトリックスを乱暴な、短絡的な荒くれに描いている。表現が乱雑で、落ち着いた文体ではない。「……」の部分が多すぎる。発話がありきたりの台詞で生きていない。400ページほどある長編だが、ゲトリックスの女好き話が多すぎる。マキシムにしても、ゲトリックスにしても、言葉使いが馬鹿とか、馬鹿野郎とか汚い言葉使いが多すぎて、下品な小説だ。カエサルの弁舌とかゲトリックスがいかにして部族をまとめたかを読者に納得させる箇所がない。そのための演説もない。
文体も短文が多すぎで、歴史小説としての重みがない。大体ゲトリックスがカエサルの妻を拉致してくる話もいい加減なものだ。
アレシアの戦いでもあれほどガリア軍が優勢であったのにシーザーの登場で激変するのはおかしい。救援軍の敗退も説明不足でよくわからない。
語り手がカエサル、アステル、マキシムス、ゲトリックスなど視点が変わるので、小説全体として落ち着かない。
下品で、表層的で、人間の奥底の心理をえぐっていない、話がわかりにくい。歴史小説になっていない。直木賞受賞作家が書いたものとは思われない。
最大の欠点:カエサルはゲトリックスを本心ではどう思っていたのかが描かれていない。ブルータスはげトリックスの助命を願いでるが、カエサルの反応が描かれていない。
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