2017年10月22日日曜日

骨餓身峠死人葛(ほねがみとうげほとけかずら) 野坂昭如

〇 着想(死人の肉体を肥やしにして葛が花を咲かせ、食べられる実をつける)をどんどん発展させ、これでもかという極限の状態に読者を引き込み、近親相姦、父が娘を犯す、母娘の愛撫、村人の老若男女分け隔てなく誰とでもセックスする考えられない状態になる。

〇 文章が簡潔で、余分な言葉がない。ダラダラしていなくて、連体形止め,名詞止めが目立つ。美文調。

〇エンタメとして読者を最後まで引きつけてはいるが、悪乗りしているような展開で、辟易する。

〇出だしの状況設定が長すぎてよく分からない。ただ、「水をひく工事の、つつがなく終えてやがてその竣工式。あらたなる水は、岩肌にうがたれた穴からやがてあふれ出る手はず」の部分が、小説の最後の部分「……急に水位がかわったから、ふわりとお互いの位置が変わって、(略)少しずつ浮上をはじめる、その先端に、たかをの姿があった」とうまく繋がっている。市長をはじめみんなが竣工式であふれ出る水を待っていると、たかをの死体がまず出てくることになる。みごとなエンディングになっている。

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