2018年1月27日土曜日

ノルウェイの森 村上春樹

 精神を病んでいる直子と快活な緑の二人の女性を好きになり、悶々としているワタナベは、直子の自殺(恐らく直子が身を引いた)により、女は緑一人に決まっていく。
  直子が自殺すると言う結末は読者に衝撃をあたえる。直子とワタナベの関係が淡々と退屈するぐらいなテンポで繰り広げられているからその分、最後に急展開するだけに衝撃は強い。読者はワタナベに感情移入しているから、直子の死は心を打つ。
 ワタナベの人間がいまいち分かりにくい。毒がない男だ。
 日記風の描写が延々と続くため途中で飽きてくる。しかしこの作品はエンタメでもなくドラマティックでもないので、辛抱して読むしかない。読者を釣っていく仕掛けがない。
 それにしても、セックスシーン(それも、どぎつい)が次から次々と出てくるが、村上は男女の話を書くときにはセックスシーン抜きでは書けないのだろうか。結局、直子との思い出も、緑との思い出も、せんじ詰めれば(レイコも含めて)セックスの思い出しかないではないか。
 レイコが第三者的な立場で登場するが、レイコは読者とワタナベの緩衝剤になっている。
 全体に真面目な話だ。 「海辺のカフカ」と大違いだ。

2018年1月25日木曜日

海辺のカフカ 村上春樹

  哲学的で理屈っぽく、シュールリアリズム的で、ユング的で、幻想的で、非論理的で、現実離れしていて、現実と異世界の境目的で、ナポレオンとかベートーベンとかハイドンとか紫式部とか、上田秋成とかチェホフとか一杯学識がさらけ出されて、小難しいことを並べて、何が何だかわからない。
 一体村上春樹はこの本で何を読者に言いたかったのか。15歳の少年の家出、父を殺して母と姉と交わることの意味は何なのか。オイディプス王がなぜここに入り込むのか。
 特に分からないのは最初に女教師が16人の生徒を連れキノコ狩りに行って、子供が全員一時記憶喪失状態になり、一人だけ意識が回復しなかった。女教師は月経がはじまり、一人の子供を叩いたことが私信としてくどくど手紙にしたためられているが、その後、東大の教授は登場しない。あの茸狩り事件はこの作品の中でどういう役割を果たしているのか。チェホフが「拳銃を出したらぶっ放せ」と村上は本文で言っているが、キノコ狩り事件を出しておいてぶっ放していない。中途半端だ。
 大島は学識が余りにも豊富すぎるし、佐伯さんやナカタさんはどうして死ななければならないのか。星野青年はなぜ猫と話ができるようになったのか。カーネル・サンダースやジョニー・ウォーカーはいったい何者なのか。  
 村上が読者に伝えたいことがあるとすれば、話をこんなに抽象的に読者に分からないように、分からないように、哲学的すぎるぐらいの表現や展開にしなくても、もっと具体的に現実的に表現した方がたとえ超現実世界を描くにしてももっと伝わりやすいと思う。わざと、計算ずくで、読者を混乱に陥れている。石を開けるとはどういうことなのか。閉じるとは裏返すことなのか。??? 
 意識の中での殺人が現実世界の殺人になるとか、夢の中の性交が現実世界の性交になるとか、もっと書きようがあるはず。
 帯に「海外でも高い評価を受ける傑作長篇小説(新潮文庫)とあるが、高い評価を受けているのは作品が難解であるからだ。難解なモノであればあるほど人はバカにされないように、それを高く評価するものだ。

2018年1月24日水曜日

Livvie by Eudora Welty

  An old man named Solomon marries a sixteen-year-old girl, Livvie and lives in a deep country. She was obedient to him and works hard for him. However, as 9 years passes he becomes feeble and lies in bed all day. One day Cash, a young field hand working for him intrudes their house, kissed Livvie and behaves as if he were her husband. Solomon gets angry in bed but he regrets that he married such a young girl. After his death, Livvie and Cash “moved around and around the room and into the brightness of the open door.”
  The story shows the vivid contrast between dying Solomon and lively Cash. Solomon signifies winter and Cash spring. At the outset of the story Solomon “asked her [Livvie] if she was choosing winter, would she pine for spring, and she said, “No, indeed.” However, she chooses spring in the end as if destined.
  In the end of the story “the sun was in all the bottles on the prisoned trees, and the young peach was shining in the middle of them with bursting light of spring.” This sentence is a metaphor. The prisoned trees means that she is imprisoned in Solomon’s house. The young peach is Cash and Livvie.
   This is a sad story.

2018年1月12日金曜日

"The Remains of the Day" by Kazuo Ishiguro

  The protagonist, Mr. Stevens is a man of dignity as a butler working for Lord Darlington. He is faithful to his master and never reveals his emotion in public. He strictly controls himself. He never criticizes his lord’s attitude which endangers Britain. Nearing the end of his life when he had limited remains of the day, he resolves to lead the rest of his life with bantering.   First, I felt tired of reading the book, for there was little dramatic development, but as I read it, I was interested in Mr. Stevens’s way of thinking. Ishiguro described his psychology well. Most of the story consists of the description of how he thinks. The description drives the readers to identify themselves with Mr. Stevens.