2018年1月25日木曜日

海辺のカフカ 村上春樹

  哲学的で理屈っぽく、シュールリアリズム的で、ユング的で、幻想的で、非論理的で、現実離れしていて、現実と異世界の境目的で、ナポレオンとかベートーベンとかハイドンとか紫式部とか、上田秋成とかチェホフとか一杯学識がさらけ出されて、小難しいことを並べて、何が何だかわからない。
 一体村上春樹はこの本で何を読者に言いたかったのか。15歳の少年の家出、父を殺して母と姉と交わることの意味は何なのか。オイディプス王がなぜここに入り込むのか。
 特に分からないのは最初に女教師が16人の生徒を連れキノコ狩りに行って、子供が全員一時記憶喪失状態になり、一人だけ意識が回復しなかった。女教師は月経がはじまり、一人の子供を叩いたことが私信としてくどくど手紙にしたためられているが、その後、東大の教授は登場しない。あの茸狩り事件はこの作品の中でどういう役割を果たしているのか。チェホフが「拳銃を出したらぶっ放せ」と村上は本文で言っているが、キノコ狩り事件を出しておいてぶっ放していない。中途半端だ。
 大島は学識が余りにも豊富すぎるし、佐伯さんやナカタさんはどうして死ななければならないのか。星野青年はなぜ猫と話ができるようになったのか。カーネル・サンダースやジョニー・ウォーカーはいったい何者なのか。  
 村上が読者に伝えたいことがあるとすれば、話をこんなに抽象的に読者に分からないように、分からないように、哲学的すぎるぐらいの表現や展開にしなくても、もっと具体的に現実的に表現した方がたとえ超現実世界を描くにしてももっと伝わりやすいと思う。わざと、計算ずくで、読者を混乱に陥れている。石を開けるとはどういうことなのか。閉じるとは裏返すことなのか。??? 
 意識の中での殺人が現実世界の殺人になるとか、夢の中の性交が現実世界の性交になるとか、もっと書きようがあるはず。
 帯に「海外でも高い評価を受ける傑作長篇小説(新潮文庫)とあるが、高い評価を受けているのは作品が難解であるからだ。難解なモノであればあるほど人はバカにされないように、それを高く評価するものだ。

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