2020年9月14日月曜日

眩(くらら) 朝井まかて

  あまり面白くない。なぜならば、父北斎を亡くして、父の名を借りずに独り立ちしていくお栄の心情を描いていない。「吉原格子先の之図」も真ん中に黒く影になっている花魁のことについては一言も触れていない。「富士越龍図」も龍を描いた意義について触れていない。「夜桜美人図」も善次郎の返事の図でごまかしている。「三曲合奏図」もどのように三人の女を描くかについて、あれこれ考えるように描いているが、所詮結果の図があるので、それに注釈をつけただけのこと。また「小布施の岩松院の鳳凰の天井画」もあの年でどのように描いたかが描写していない。もっと、お栄が父親を亡くしてどう親父の後を引き継ぎ、世間に認められるようになったかが描いてない。善次郎との恋仲がどうの、セックスがどうの、北斎の孫の時太郎がどうしようもない男で、それがどうのというページが多すぎる。広重や滝沢馬琴についての描写が少ない。馬琴に至っては、単に柚子の薬を持ってきただけのことが書いてあるだけ。

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