2021年9月8日水曜日

糸子の体重計  いとうみく

 作者のいとうみくはJOMO童話賞優秀賞受賞者。本作の主人公は小学校5年生の細川糸子。糸子はクラスで一番大きくて体重のある高峰理子とダイエットを始める。

話は糸子と理子のクラスメート町田良子、坂巻まみ、滝沢径介。章立てが、五人それぞれの章になっており、各章を読んでいくと、誰もが悩み、つまづき、友人関係を気にしていることが描いてある。これはまるで大人の人間関係と同じだと思った。児童文学だから、もっときれいな問題のない冒険物、友愛物、何かを成し遂げる話かと思ったら、大間違いだった。お互いに牽制し合い、お互いを認め合う、人間の物語が描いてある。モチーフとしてはクラス対抗マラソン大会、文化祭の出し物で段ボールで迷路を作る作業、雪で鎌倉を作ること、先生と生徒の関係などが描かれている。

この本を読むのはおそらく小学生高学年だと思うが、多くの読者は自分のことが書いてあるとおもうだろう。

結局、児童文学にせよ、大人向けの文学にせよ、詰まるとことは、人間の描写、人間の葛藤だと思った。

命名の仕方が面白い、太っている女子を「細川糸子」、何事もそつなくやっていく「町田良子」、それから良子にいつもつるんで機嫌を取る「坂巻まみ」。背の高い「高峯理子」、世間の逆風に立ち向かっている「滝島径介」。

新美南吉童話賞応募のために読んだが、参考になった。

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