2021年9月25日土曜日

宮本武蔵 直木三十五

 直木賞と言う賞の本家本元の直木三十五の小説だが、落胆した。

初め父無二斎と二刀流について議論する場面がある。なかなかの議論の展開であったが、議論が物別れになったとき、無二斎が、立ち去っていく弁之助の背に短刀を投げつける場面がある。これは不自然。それを躱す弁之助もなぜ交わすことができたかが理解できない。次に著者は(勇を頼みすぎる。この上は、少し文事を学ばさぬといかん)と無二斎に言わせているが、なぜ文事を学べば、勇を抑えることができるかの立証してない。また、ここで章が変わるが、次の章では文事の話でなく、道場破りの話になる。

道場破りの話も、読者をハラハラさせるために技とらしく、僧が有馬に「何分、不具になどならぬように、お手柔らかに」と頼ませるが、結末が見え見えである。

後半は武蔵にまつわるエピソードの羅列で、小説になっていない。三十五は途中から武蔵の小説を書くことを放棄したのか。

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