2022年4月23日土曜日

炯眼に候  木下昌輝

 織田信長にまつわる7編の短編集。一話が80ページぐらいか。どの話も奇想天外で面白く造られている(信長の首が力士の腹に隠されていた。鉄甲船が沈められ、その上に別の鉄甲船を乗せる。天気を確実に予言する男を家来にする。鉄砲の弾が信長がつけていた十字架にあたる、など)。しかし、よく考えればどれも現実離れして、何か変だ。子供だましのような感じさえする。突飛すぎるからだが、これが売りであり、同時に瑕である。したがって、どれもフィクションの匂いがプンプンして作意の跡があちこちにみられる。工夫に工夫を重ねて作られたが、こね回して作ったことが見え見え。人工的でなく、もう少し自然体で描けないのか。木下氏は「オール読物新人賞」受賞者。「宇喜田の捨て嫁」を読みたい。


0 件のコメント:

コメントを投稿