2022年8月7日日曜日

羅城門に啼く 松下隆一

 京都文学賞受賞作ということで読んだ。受賞しただけの読ませる力がある。

オレが主人公の一人称小説。そのため主人公を取り巻く状況描写が制限され、またオレの文筆力のレベルに合わせたのか、文章が稚拙。軽いタッチの文が多く重みがない。

展開は巧い。極悪人のオレは悪行を重ねるが、空也上人に会い、なみあむだぶつを唱える殊勝な男に変わる。上人の生き方や信ずるところが描かれているが、今一つ足らない。オレはある娘の両親を殺しており、後にその娘と穴倉で暮らすようになる。最後の場面で親殺しがばれるが、娘の出産を助け、赤子を無事取り出す。が、母は死ぬ。

ドラマチックな構成だが、作為的な匂いがプンプンする。わざとそう言う状況を設定したということが見えてしまう。

若いころの悪行が天罰となったような因果応報型エンディング。すとんと落ちるような感動がない。

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