駄作だ。作幕末の尊王攘夷で荒れる日本の行く末を案じる青年、永井尚志の話。幕末の話であるのに全然、雰囲気が出ていない。登場人物の台詞が令和言葉になっている。違和感を覚えた。例えば、以下のような場面がある。これは酷い。
「誰かおるのか?」
影が障子に映ったのだろう。
永井は慌てて膝をついてこたえた。①
「目付、永井岩之丞にございます」
「あ、永井? 入ってよ」②
どうやら阿部伊勢守らしい。
永井は戸惑った。③
「しかし、私は御用部屋には……」④
「ああ、気にしなくていい。誰もいないから」⑤
そういう問題だろうか。永井はどうしていいかわからない。
① こたえるは「答える」と漢字にすべき ②入ってよ。が女性っぽくて気持ち悪い。③戸惑うは明治時代の造語 ④いないは「おらぬ」に ④私は江戸時代は女性の一人称 ⑤いないを、「おらぬ」に
以上の如く、全てのページで台詞の時代考証をしていない。読む気になれない。
また、永井に岩瀬や堀から手紙が来るが、これは章立てを変えて堀や岩瀬を主人公にすべき.伝聞の伝聞では話にならぬ。勝海舟についても、貶すだけの展開で、勝の台詞が一言もない。
井伊直弼が暗殺される前で終わっているが、ここまで書くなら暗殺の件も書いて終るべき。
とにかく、時代小説の重みがない、ティーン向け小説のようだ。情景描写がほどんどない。
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