2025年7月31日木曜日

天涯の海    車浮代

 半田市のミツカン酢がどのように創業されたかが、史実を元にフィクションを交えて書かれている。

著者は膨大な史料を元に月刊誌「パンプキン」に二年間にわたり連載した小説である。

中野又左衛門三代を章ごとに纏めて描いた。酒粕から酢を独立させ、江戸で販路を広げ、次第に繁盛していく様子が描かれている。史料を相当読み込んだと思われる。

家系の繋がりが、ややこしくて、そちらに重点が置かれている場面も多、退屈で退屈であった。むしろ、そこは簡略にして、如何に酢を売れるようにしたかを書いて欲しかった。書いてはあるのだが、説明が多く、目に見える描写が少ないページが多かった。Don't talk but show.

荒筋で話が進んで行くのが多かった。しかし、描写を詳しく描くと、ページが多くなり、妥協するしかないか。

世代が変わってもなお今日まで続く基礎を作った創業者たちの苦労が分かった。

私の実家、大垣の味噌溜屋「小橋口清水屋」で、ミツカン酢を売っていた。こんな歴史があるとは知らなかった。

早亭北寿(北斎の門人)の弁財船の表紙がいい。

2025年7月19日土曜日

まいまいつぶろ  村木嵐

 家重の言葉が不明瞭のように、この本の正体が不明瞭。

まず、主人公が誰か分からない(感情移入ができない)。主人公は、家重か、越前守か、意次か、お幸か、忠光か。

次に、時代考証が欠落。例えば、比宮が没してからもお幸は尼にもならず、京にも帰らない。三年後に家重の側室になる。これはあり得ないだろう。また、家重が自分のことを「私」と言っている。『日本国語大辞典』よれば、「私」は、「近世においては、女性が多く用い、ことに武家階級の男性は用いなかった」とある。さらに、「家重が将軍を宣下した」は「宣下」の誤用法である。

第三に、話しの辻褄が合わなくない。例えば、家重が「忠光を遠ざけるくらいなら、私は将軍を……」と言うのを、10歳の家治が「忠光を遠ざけよう。権臣にするくらいなら。私は将軍ゆえ」と解釈するが、忠光の言葉と家治の言葉が合致していない。

第四、平田靱負の自刃に触れる場面があるが、幕府の重役は靱負の苦悩を表面的にしか描いていない。

最後に、致命的な欠陥。読者は忠光の心が、どのようであったか知りたいのに、忠光の心理描写が欠落。忠光は通訳しながら、どのように考えていたのか、一言も触れていない。忠光の心の葛藤が知りたい。表面で、なぞってあるだけで、これも「ないないつぶろ」であった。


発音


"わたし【私】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2025-07-19)


2025年7月9日水曜日

Snow, Blood, Love by Ami Cameron, published 2018

 This is an excellent short story. The setting is good. An unexpected ending is good. Grandma's love warms your heart.

Because Jessica's grandma's house is decorated with does, the protagonist, Jessica, is familiar with guns. That's why Merideth's husband is shot to death. Grandma tells Jessica to let it go that she doesn't have anything to so with the murder. In the end Grandma reveals her crime to police by way of a letter.  Her crime has been carried to another world. "Good riddance" was the words Jessica's relatives say. So, nobody was responsible for his death. Jessica will have to carry the secret to her death. Grandmother's love for her daughter was so great that she killed her husband. 

The dream scene is too vivid. A dream is vague and normally vague, but this story depcts Jessica's dream vividly and clearly. That is against reality.

In the end, Meredith had something to do with the murder. That was a surprise. 

Logical and natual develoment of the story. Well written. 

The writer says, "Being authentic and real is important to me. Being fake just isn't an option." Her description of Jessica's dream is unreal.