「木挽町の仇討ち」が、読み応えのある小説であったため、同じ作家の「商う商人・杉本茂十郎」を読んだ。これも良くできた小説である。
江戸の商人の問屋仲間と株仲買人と菱垣廻船を統括し、江戸の町民のため尽力した杉本茂十郎の物語である。
「毛充狼(もうじゅうろう)の渾名を持つ茂十郎がいかに気風がよく、度胸が据わっており、大物商人であるかを読者に巧みに伝えている。シャーロックホームズのワトソン宜しく、茂十郎の人となりを、堤弥三郎が語り手となり、その活躍ぶりを微細に語って行く。
茂十郎が死んで20年後に老中水野忠邦に語るという手法を上手く用いている。
永井さんの小説は無駄がなく、どの文章も無理なく読んで行ける。展開も無理がかない。頭に入りやすくしてある。作家はこういう文を書かなければいけない。
巻末に参考文献として25冊ほどの文献リストがある。そこからこのような作品を生み出す手腕は大したものだ。
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