2019年5月15日水曜日

川端康成 雪国


全然面白くない。だらだら、ながながと、島崎が駒子の外見、内面をつぶさに観察しそれを言語化している。話が全然展開していかない。三年間で駒子がどのように変化しているかを著しているとは思うのだが、顕著な変化はない。ただ、べたべたと駒子の島崎に対する心情をこまごまと描写している。ドラマがない。しいて言えば、葉子の死がドラマチックではあるが。起承転結の、起があって、あとは承承承承……と続く。退屈する。長編であるのに感動がない。

駒子の心情(肉体関係を求めているのだが、はねつける矛盾か)をうまく描いてはいる。ただ、駒子と葉子に好かれるという川端自身の自己満足小説ではないか。

どこで話を始めてもいいし、どこで終わってもいい。始まりと終わりのない小説。

蚕の話が長いが、どういう意味があるのだろう。島崎と駒子は肉体関係があったことを「指が覚えている」で表しているが露骨。駒子が「聞き間違えて」怒るが、何のことかわからない。

2019年5月4日土曜日

川崎船(ジャッペ) 熊谷達也


久々に感情移入した名短編。主人公栄二郎の気持ちが手に取るようにうまく描かれている。オドに対する憎しみ、オドが火傷で漁船に乗れなくなって、オドの偉大さがわかる。美樹との恋と励まし、大五との漁場トリの激しい争い。見事に話が展開する。
エンディングで、オドが貯金通帳と印鑑を出すが、ちょっと出来すぎな話。

2019年5月2日木曜日

The barber Whose Uncle Had His Head Bitten Off by a Circus Tiger by William Saroyan

   This is a very funny story, but on second thought, you will ponder about yourself.
   A boy goes to a barber to have his hair cut. And the barber tells a very funny but scary story to him while his was cutting his hair. At the end of his story, he says his poor uncle had his head bitten off by the tiger. The boy was scared. He wants to go to the barber again to listen to his story of man on earth.

Here at the end of the story, Saroyan’s tone changes. He talks about men in general. He ends the story which relates to every man. That is to say, he talks about something universal, or a sad story of every man alive, who is lost and lonely and always in danger.   

By the way, I wonder this title is good or not, because it reveals the end of the story.

2019年4月25日木曜日

The Death of Ivan Ilyich by Tostoy

Too long a story. Too many repetition of Ilyichi’s agony, fear, and hope.

The story exhausts the readers as much as Ilyichi. At the end of the story Ilyichi seems to become demented. He has lost clear judgement of “right” and “wrong.”

He says, “Where are you, pain?” and “And death? Where is it?” He seems to have overcome the agony, but this may have been caused by his brain’s malfunction.

2019年4月4日木曜日

「ユダヤ鳥」 バーナード・マラマッド

「ユダヤ鳥」は奥の深い短編で、一筋縄ではいかない。単なるユーモア小説と思って読んでいたら、そうではないのだ。最後の一行の「ユダヤ迫害者たちに」というイーディの言葉は、話をひっくり返す。実はコーエンはユダヤ人で、コーエン一家(イーディとモーリー)はユダヤ系米国人だ。それは、47ページで鳥が祈りはじめると、「イーディは頭を垂れ」「モーリーは祈りに合わせて身体を前後に揺らし(祈りの動作)はじめ」ることで分かる。
 なぜユダヤ人であるコーエンはユダヤ鳥を殺したのか。ここで私は頭が混乱した。昨日ネットで調べてみると、「ユダヤ人の反ユダヤ主義者」とか「ユダヤ人を忌み嫌うユダヤ人」がいるという。いわゆる自虐か。ユダヤ人がナチスによって劣等民族と烙印を押されたことで、そう思い込んでいるらしい。ユダヤ人であることが嫌で、嫌いなユダヤ鳥を殺したという訳か。(この辺はユダヤ人が読むと実感するかも)
 ちなみにユダヤ人の名前の由来をネットで調べたら、コーヘン(Cohen)はユダヤ語で「聖職者」という意味で、またシュヴァルツ(Schwartz)は「黒」という意味だ。(作者のマラマッド(Malamed [Malamud?])は「教師」)。
 我々、日本人が外国の本を読むことは、背負っている文化が違うから、きちんと読めないことを痛感した。

暗殺剣虎の眼 藤沢周平

達之介が父の仇と思っていた清宮太四郎は、実は仇でなかった、ということで一つの区切りとなるが、最後の章で、7年後志野が兼光周助の嫁になり、子供もいる。実は、この周助こそが闇討ちができる男で、闇でも物が白昼のように見ることが出来るのである。仇は周助に無限に近い。
しかし、最後に周助を唐突に出すのは取って付け足したよう。大体、達之介が仇とすべきは藩主右京太夫ではないのか。
話の展開と結末に不満が残る。

2019年3月10日日曜日

「奈良の八重桜」 神部眞理子

奈良の八重桜  神部眞理子

仏師運慶の生涯を少年時代から没年までを描いた力作。康慶の業績から運慶の制作した仏像を制作順に依頼の経緯を羅列している。
文章表現はいまいち。運慶の人格描写が浅い。葛藤がうわべだけになっている。快慶の人格も掴みにくい。慶太とか涼快などの名前もピンとこない。源平の争いの史実を差し挟んでどういう時代であったかが分かるようになっていて良いが、詳し過ぎる。
定覚が南大門仁王像を南向きにしなかったことを運慶に詫びているが、その経緯が分からない。仁王門の制作過程が簡単すぎる。
340ページに生涯をまとめ上げるのは大変であるが、うわべをなぞった感じ。誤字が多い(院尊が印尊/院実が印実)