圭一、三宅、望月、有川、慎子(マキコ)が、最後に集団自殺をするのかどうかという一点に向かって、読者を引っぱっていく。同時に圭一の本音(自殺する心の準備ができていない)と、意地、虚栄、見栄のため自殺に追い込まれていく心理描写が巧みだ。
難点
望月をはじめ、5人とも自殺をしたくないと思っている(…顔がゆがみ、唇が歯列をのぞかせて震えていた)のに、なぜ望月は「行くぞ」と叫んで崖から飛び降りたのか。望月が最初に飛び降りるまでに至る心の変化の描写が足らない。
最後圭一は岩に頭蓋骨をぶつけて死んでしまうのだが、その死に方を美しく描いている(不思議に痛みは感じられず、… かすかな安らぎをおぼえながら…)。しかし、飛び降りて岩にぶつかり落下していくときにこのような描写はしらけている。
むしろ、びくびくしていた圭一が、ほかの4人とも同様に死を恐れていることを知り、有川に対する蔑みと憤りが、他の4人に対しても湧いてきて、逆に率先して勇気のあるところを見せる(虚栄、見栄、意地)ために最初に崖から飛び降りてしまうと言う方が読者は納得するはずだ。
理解に苦しむ点
何故最初に自殺した男と若い女二人を登場させたのか
吉村 昭(よしむら あきら、1927年5月1日 - 2006年7月31日)は、東京府出身の小説家、日本芸術院会員。1966年に『星への旅』で第2回太宰治賞を受賞。次いで長篇『戦艦武蔵』が『新潮』に一挙掲載されたことにより作家として立つことができた。1972年『深海の使者』により第34回文藝春秋読者賞受賞。1973年『戦艦武蔵』『関東大震災』など一連のドキュメント作品で第21回菊池寛賞受賞。
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