話の展開と落ちが実にうまい。オーヘンリーの落ちを思わせる。タイトルは現代通り「重要参考人」の方がいい。
軽蔑されていた男レスターバーナムが、あるとき殺人現場を見て、その状況を集まって来る通行人に何度も話すうちに自分が次第に有名人になったような錯覚に陥り、最後は「重要参考人」として警察に1年間拘留されてしまう。刑期を終えたバーナムは交通事故を目撃するが、面倒なことにならないよう、知らんふりをする。
特に殺人の状況を話す内容がどんどん実演を交えるようになっていくあたりは、くどいようだがくどくないように仕掛けてある。最後の落ちに持っていく重要な伏線となっている。
人間の心理、ごくつまらない生活をしていた男が一躍有名になっていく心の動きを田的確に描いてある。ユーモア小説
誤訳集
1.He … turned to look at the huge gray prison that had held him, but he had gone around the corner without realizing it.
誤:彼は…ふりかえると、自分をとじこめていた巨大な灰色の刑務所があったけれども、それと気がつかずに角を曲がってしまったので、
私訳:彼は…知らないうちに角を曲がってしまっており、振り返って見た時には巨大な灰色の刑務所は見えなかった。
2.… life, in which he never talked to such important, improbable persons as district attorneys and Irish detectives, never had pepper put in his coffee by exasperated swindlers….
誤訳:彼のコーヒーに胡椒なんか入れない生活。そういう生活については、彼も地方検事やアイルランド人の刑事と言った、おそれおおい人たちにはついぞ話さなかった。
私訳:地方検事やアイルランド人の刑事のような偉い人とは話す機会がない、また、彼のコーヒーに詐欺師などが胡椒なんか入れない生活。
3.That was Sammy Spanish that was killed. He’s an important figure.
誤訳:サミー・スパニッシュが殺されたのもそのためだった。やつは重要な人物だった。
私訳:殺されたのはサミー・スパニッシュで、奴は大物だった。
(サミーは重要参考人ではなく、闇の世界の大物だった」ということ)これは大きな誤訳だ
4.Barnum looked hurriedly at him, at the fender, at the street around him.
誤訳:バーナムはあわててその男とフェンダーと通りに眼をやった。
私訳:バーナムはあわててその男を見て、目をフェンダーに移し、それから通りを見た。
(Irwin Shawがわざわざ、…, at the fender, at the ….とカンマで区切って、atを並べている文体の味をぶち壊しにしている。
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