恋文の文面は思わずドキドキするほど実感が伝わってきて、男性作家であるのに、乙女の恋心を見事に描いている。また、第6信で読者をあっと言わせるどんでん返しは見事。
ただ、第6信の最後の部分は何度読んでも理解できない。
引っかかった点。
1.なぜこの手紙を書いた「善き友人」たちはこのような回りくどい方法でS君が「有為な青年を物色している女」の犠牲になることを止めようとしたのか。なぜ彼らはS君に直接会ってそう言わないのか。じれったい。
2.S君が「安住すべき地」はM子様なのか、よくわからない。
3.タイトルについて。なぜこのようなフランス語まがいのタイトルにしたのか。「穴の中の手紙」(英語でLetters
in the Cave)では品が落ちるのか。このタイトルが分かる人は少ないのに、あえてこのタイトルをつけたのは奇をてらったのか。
橋本五郎の紹介文で、江戸川乱歩が「作品の着想や組立よりも情味と文章とに優れている」と書いているが、同感。
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