2021年2月7日日曜日

紅嫌い 坂井希久子

江戸摺師の娘、お彩が呉服屋の色彩見立てアドバイザーになる話。色盲のため赤と緑が同じに見える武家をうまく材料にしている。

そこに、目の見えない元摺師の父親、呉服屋の次男、手代、許嫁などを登場させて、一編のの話に仕立てている。最後は、呉服屋の色の見極め役になるのかならないのか、はっきりしないところで、余韻をもっている。

時代物を描くときの参考になった。

膝を払い立ち上がる 間口10間はあろうという大店の前にたどり着いた。板戸を取り払った店内は、大いに賑わっている。奉公人は忙しく動き回り、広々とした座敷では、多くの客が反物を物色中である。お彩のように古着を着ている者はいない。ぐっと眉を寄せる それぞれの仕事をしつつも聞き耳を立てるこれは本気だ 「でもーー」と呟き、視線をさまよわす 噂になってます 仰天して仰向けに反った 様子を見守っていた他の手代 足を濯ぐ 足を拭う しばらく黙々と箸を動かしていた辰五郎が、ふいに思い出したように呟いた。沢庵をぽりぽりと齧りながら、先を続ける 余りの剣幕に、お彩は口の中のものをごくりと音を立てて飲み込んだ 肝心要の外堀はすでに埋められて

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