半田の酢を創業した三代にわたる中野又左衛門の物語。酒屋の酒粕から粕酢を考案し、酢を醸造酒の仕事から切り離し、酢の醸造にまい進した一代目、二代目が江戸鮨の酢を考案し、三代目がさらに発展させ、半田の村民のために水害を機に尽くした。
よく調べて執筆している。ただ、展開にデジャブ的な会話があり、真に籠っておらす、上辺だけで話を続けた感がある。特に先代が亡くなって行くとことなど。誰でも考えつくような対話が続く。また、『天涯の海』の舞台として奥の細道の地図が載せてあるが、あまり意味がない。二代目だったか三代目が奥の細道の行程を辿って平泉に行くが、その二十日間の旅の中身は三四行で終わってしまっている。帰ってからの旅の思い出話も紋切り型でつまらない。
最初の酒が焼けた場面からの出だしはいいが、あとが続かない。当時の言葉遣い(半田弁、江戸詞の使い分けがきちんとできていない。
野田醤油の発展の小説を考えているが、少しは参考になった。
どちらにせよ、山吹の酢が繁盛するようになった苦労話、三代目が地震と津波のあと、私財を投じて屋敷を作る辺りは読者を引き付けた。
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