2010年1月30日土曜日

三浦哲郎 「みそっかす」

 食中毒による下痢で妻が病院に運ばれ、無事に回復するという、ごくありふれた家庭の事件を一つの短編にしている。最後に「みそっかす」「甘茶っ子」と言う概念を持ってきて話を締めくくり、この緊急事態をほのぼのとした少年時代の思い出に結び付け、てんやわんやの騒動が穏やかな雰囲気にすり替えている。読者は妻が大病かもしれないと言う緊張から解き放たれる結末になっている。  話し手には3人娘がいるが、その内次女と3女は同居しているが、長女は結婚して別居しているのかどうかが分かりにくい。

2010年1月24日日曜日

円地文子 「黒髪変化」

 タイトルの付け方が巧い。この作品は黒髪の巫女がポイントになっている。  蓮子と言う女がいるのに恵美子と結婚することになり、三三九度の盃にお酌をする巫女がこともあろうに蓮子とは読者もびっくりする。新婚旅行の汽車の中に蓮子が現れ、蓮子は汽車のデッキから落ちてしまうと言う話。  面白いことは面白いのだが、話ができすぎ。だいたい巫女は高校生ぐらいの処女が務めるのに、30歳ぐらいと思わせる蓮子が、巫女とは話に無理がある。 円地 文子 1905年1986年 1957年 『女坂』で第10回野間文芸賞を受賞 1969年 『朱を奪うもの』『傷ある翼』『虹と修羅』の一連の活動で第5回谷崎潤一郎賞を受賞(自身が選考委員) 1979年 文化功労者 1985年 文化勲章を受章

三浦哲郎 「みそっかす」

 食中毒による下痢で妻が病院に運ばれ、無事に回復するという、ごくありふれた家庭の事件を一つの短編にしている。最後に「みそっかす」「甘茶っ子」と言う概念を持ってきて話を締めくくり、この緊急事態をほのぼのとした少年時代の思い出に結び付け、てんやわんやの騒動が穏やかな雰囲気にすり替えている。読者は妻が大病かもしれないと言う緊張から解き放たれる結末になっている。  話し手には3人娘がいるが、その内次女と3女は同居しているが、長女は結婚して別居しているのかどうかが分かりにくい。 三浦哲郎 昭和6年~ 『忍ぶ川』で第44回(1960年下半期)芥川賞 1976年 『拳銃と十五の短編』で第29回野間文芸賞 1983年 『少年讃歌』で日本文学大賞 1985年 『白夜を旅する人々』で大佛次郎賞 1990年 「じねんじょ」で川端康成文学賞 1991年 『みちづれ』で伊藤整文学賞(小説部門)

2010年1月1日金曜日

松本清張 「声」

問題点1 真夜中の午前0時23分に殺人現場に電話がかかってきたとき、犯人が電話に出て、「間違い電話だよ。こちらは火葬場だよ」と言ったが、これはありうることだろうか。 ある家で人を殺したところに電話がかかってきたとき、犯人は、びっくりするだろう。しかし、わざわざそこの住人でもないのに、電話に出るだろうか。一瞬電話の音に緊張して電話に出ない、と言うのが犯人の取る態度ではないか。 「間違いだよ」と言った場合、また同じ電話がかかってくるはずだ。電話に出ることが面倒なことになると言う直感が働くのではないか。 問題点2. いくら職場の300人の声を聞き分けられると言っても、それは、1回だけ聞いた声ではなく、何回も聞いて覚えた声だから、「声」の中の一回きりしか聞いてない声(それもほんの片言なのに)を3年後に聞いて同一の声だと認識するだろうか。無理がありはしないか。