2010年7月2日金曜日
室生犀星 「あにいもうと」
愛しさ余って、憎さ百倍。
兄の伊之は、妹のもんを赤ん坊の時から可愛いがっていたが、小畑という無責任な書生ともんが出来てしまって、小畑を張り倒し、もんに毒づく。一方、もんも兄に対してありたっけの悪口雑言を浴びせかけるが、本心は兄が好き。壮烈なコンフリクトの奥に相手を思う愛がある。父の赤座が、蛇籠を川底に仕掛けるとき、川の水は、「少しの水の捌け口があると、そこへ怒りを含んで激しく流れ込んだ」。あにいもうとも、相手の弱みに怒りを激しくぶつける。
これ以上のひどい罵り合いはないと思わせるぐらいの罵り言葉オンパレード。これぐらい極端にしなければ読者は小説をエンジョイしない。
室生犀星1889年(明治22年)ー1962年(昭和37年)は、石川県金沢市生まれの詩人・小説家。『あにいもうと』で文芸懇話会賞を受賞。 芥川賞の選考委員となり、1942年(昭和17年)まで続けた。1941年(昭和16年)に菊池寛賞。
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