2011年4月10日日曜日

藤沢周平 「朧夜」 『約束」

「朧夜」

 老人佐兵衛は、20歳の飲み屋の女、おとき、に色仕掛けで20両と言う金を巻き上げられるが、半分ボケていて、被害意識がない。
 現代にも通ずる話。周平はおときのあくどさと、佐兵衛の幸せに浸った分をうまくバランスをとっている。ボケていると言う設定が良い。

「約束」

 10歳のおきちが、飲み助の父親と弟と妹を抱え、薬代や借金もままならぬ不幸の中、熊平が死ぬ。これにより読者をどん底に突き落とす。油屋が救いの手を差し出すが、おきちは断る。断り方が子供らしくなく大人は、嫌悪感を感ずるが、おきちが女衒に連れられ、いざ長屋を離れるとき、こらえきれずに、わっと泣き出し、大人たちは救われる。
 二つのコンフリクトが重なっている。一つは境遇的にどん底に突き落とされる。二つ目は気丈夫さで大人の反感を買う。両方のコンフリクトが泣くことによって、昇華されるという、巧い展開になっている。寅さんの山田洋次のように、読者の心が手に取るように分かっている。

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