2013年11月1日金曜日

常寒山 吉田知子


芥川賞作家であるが、この短編は読者を混乱させる。小説の大前提である視点が、故意に変えられており、一度読んだだけでは、どういう状況かを把握することは困難。それがいいという読者もいるとは思うが、邪道だ。

病床で寝ている主人公が、夫の明夫とその友達(石田、一平、姪の双子)と山登りをする。山登りの状況が事細かに描かれているので、読者は主人公が夫や友達と一緒に登山をしているのかと思う。私ははじめ、これは主人公が何年か前に皆と山登りをした時のことを回想しているのだと思って読んでいった。最後の方で、主人公が一平を蹴飛ばすところに来て、いったいどういうことだ、と思って頭が混乱した。二度目に読んだ時も、主人公が臨死体験者のように夫について山登りをしているということは気がつかなかった。

効果を狙った短編だが、読者泣かせで、罪な短編だ。この短編はいただけない。

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