2013年12月7日土曜日

青の使者 唯川恵

話としては面白いが、うまくできすぎの話。作為的、でっち上げ的短編。活字にしてしまうと本当にあったことのように思える錯覚に陥るが、いろいろ不自然なところが多い。
1.一メートルの鯉が100匹とは、いくらなんでも多すぎる。
2.ユリがどうして容子を家の中に入れたのか。玄関払いになるのが自然であるのに。
3.なぜ容子がユリを殺したのか。動機が単に青いブラウスを着ていただけというのは、単純すぎる。読者を納得させられない。気が狂ったのかと思った。 4.殺した直後に鯉に餌をやるが、気が動転しているはず。そんな余裕はないはず。
5.容子はユリを殺してから、扶美を訪ねるが、理由が分からない。 6.扶美は容子を部屋に入れるが、玄関払いをするはず。
7.一ヶ月前に森岡は死んでいるはずだから、死体を切り刻んだのか、それにしても冷蔵庫にはいったのだろうか。腐敗しなかったのか。不自然だ。
8.「青の使者」のタイトルの意味がわからない。 全体に筋だけが先行している。

○良い点
1.金歯が餌の間から出てきたことで、読者をぞっとさせること。このトリックはうまい。
2.ユリを殺すときに爪に「めり込んでいたものさえ鯉はたいらげた」は、次に出てくる森岡ごろしの伏線として効果抜群。(「未知との遭遇」「ジョーズ」の手法)

唯川恵 1955年生まれ 「肩ごしの恋」直木賞

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