エンタメ作品として、最初から最後まで読者をひきつける。その力は出だしの「どこかで銃声がした」と、次の「20分前よ」によって、読者は一体何が起こるのかという気になる。H市からトラック部隊で38度線まで逃げていくという設定も「無事に逃げおせるか」という不安を駆り立てる。
意外な結末もインパクトがあり、リンチが行われるシーンはなぜリンチかを読者に納得させている。
主人公結城の心理描写、星賀とスミルノフ大尉の人物描写もうまい。トラックで輸送されていくシーンの描写もビビッドだ。
敗戦後、満州からの引き上げ者の苦悩、悲惨さがわかる作品。
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