2014年1月25日土曜日

私刑の夏 五木寛之


エンタメ作品として、最初から最後まで読者をひきつける。その力は出だしの「どこかで銃声がした」と、次の「20分前よ」によって、読者は一体何が起こるのかという気になる。H市からトラック部隊で38度線まで逃げていくという設定も「無事に逃げおせるか」という不安を駆り立てる。 意外な結末もインパクトがあり、リンチが行われるシーンはなぜリンチかを読者に納得させている。 主人公結城の心理描写、星賀とスミルノフ大尉の人物描写もうまい。トラックで輸送されていくシーンの描写もビビッドだ。 敗戦後、満州からの引き上げ者の苦悩、悲惨さがわかる作品。

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