2014年1月25日土曜日

GIブルース 五木寛之

話のつくり方が上手い。読者を「それから、どうなるのか」と思わせ、一気に最後のページまで読ませる。 その仕掛けは出だしにある。すなわち「もしジェームスが現れなければ、どうなるか」――この一言で読者を釣っている。読者はジェームスが時間に間に合って現れるのだろうかと気になり、物語に引きずられていく。現れると今度は、「BBと上手く演奏できるか」という不安にさせておいて、最後に大尉を登場させ、読者をハラハラさせる。   どんでん返しもうまい。BBとの共演は「これが最初で最後になる」。すなわち前線に送られるという結末もインパクトがある。 北見の心理描写、黒川の人物描写、ジャズ演奏シーン描写もうまい。最後にジェームスの演奏を最高に褒め、戦線に送られる運命とのギャップのつくり方もうまい。 最後の場面で「そして、かすかに<去りし男>のテーマが響いてきた」の「去りし男」はうまい選曲名だ。ジェームスに引っ掛けてある。 回想シーンになることを丁寧に読者に知らしめているのも良い。 特に粗はない作品。原稿用紙約75枚、まとまった話が書けている。

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