2017年11月18日土曜日

宝暦治水 牛嶋正 風媒社

よく調べて書かれた本である。

木曽三川分流工事の御手伝い普請をした薩摩藩と幕府、また村人との関係が理路整然と、学者としての立場から、偏った見方をせずに、図表、地図を示しながら分かりやすく解説している。1の手から4の手の見事な地図は他の文献には見当たらない。

文献を駆使し、経済学者の目で治水工事の中身に鋭く切り込んでいる。今まで霞がかかっていた部分(本小屋と出小屋の位置、大榑川と油島の具体的工事方法、尾張藩と美濃藩の利害関係、切腹者の分析等)が明確になった。

また、薩摩藩にとって難工事ではあったが、薩摩藩士は市場経済を、身を持って一年半にわたり「研修」できて、それがその後の薩摩藩の市場経済発展につながったという展開は、多くの切腹者や病人が出るという悲劇ではあったが、成果があったという見解であり、「安堵」した。

著者の先祖が薩摩藩士として宝暦治水に参加し、工事後、揖斐川の池田町に土地をもらって帰農したという。叔父さんはその八代目だそうだ。私の先祖も揖斐で、池田にある正林寺の大檀家(松岡計助)であった。ことによると、先祖は薩摩藩かも。

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