2020年12月3日木曜日

一応の推定 広川純

 轢死した老人は事故死か、それとも重病の孫娘を助けるために自殺したのか。自殺ならば保険会社は保険金として3000万円を払わなくても良い。

「ネタバレ」定年間近の保険調査員、村越努の地道な調査により、「一応の推定」で自殺と判定されかかるが、最後の数ページでそれを覆す人形の入った箱の損傷から、老人が脳に損傷を受けていたことを突き止める。

広川純の文章がいい。必ず登場人物の人となりを2行ぐらいで説明する。場所(応接室、居酒屋、喫茶店、ラーメン屋、雑居ビル)の描写が念入りで、リアリティがある。竹内主査との会話で、読者は事件の中身を整理できる。

後半4分の一ぐらいから、結末がどうなるか気になって(太った男に会い、真相がわかる結末と思っていたら、死んでいたというところで、大いに驚かされた、このトリックは絶妙。では、どうなるかと思っていると、自転車にぶつかって子頭部を打っていたという結末に持っていく手腕は見事。

松本清張賞作品の中で特にいい作品。

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