2021年4月18日日曜日

秘密の花壇 朝井まかて

 滝沢馬琴の伝記物。馬琴の人となり、喜怒哀楽が読者に染み入るように描写されており、後半を読んでいて、馬琴に同情を禁じ得なかった。
 息子の宗伯の死、滝沢家の断絶の危機。妻(お百)の嫁(お路)苛め、足腰の衰弱、視力の衰え、筆が思うように動かないためお路に口授など、どれもこれも執筆の妨げになる。しかし、馬琴は「南総里見八犬伝」を完成させる。実に53巻。
 山東京伝に弟子入りし、師匠を乗り越えようとしていた初々しさが消え、後年は、諦観、頑固、回顧、厭世になる。
 朝井まかての筆もいい。漢語を駆使し、八犬伝から引用し、話の展開もだらだらしていなく、章ごとに話を新たに紡ぐ。
 唐山元明の小説の法則を紹介している。所謂法則とは、一に主客、二に伏線、三に襯染、四に照応、五に反対、六に省筆、七に隠微すなはち是れのみ。
 日経新聞小説2020年四月から12月まで全293回を読了した。

0 件のコメント:

コメントを投稿