2023年4月24日月曜日

Her Lover by Maxim Gorky

 The story is humorous but in the end it reveals the loneliness of a human being. The protagonist Teresa, a giant muscular vigour, is a lonely girl. So she creates an imaginary friends and tries to communicate with them by writing letters and receiving replies. Since she cannot write letters she asks a man to write letters for her. The man finally understands her situation:

"I understood at last. And I felt so sick, so miserable, so ashamed, somehow. Alongside of me, not three yards away, lived a human creature who had nobody in the world to treat her kindly, affectionately, and this human being had invented a friend for herself!"

At the end of the story Gorky explains what he wanted to say in it. The ending part should be ommitted. He should believe in the reading ability of the readers. 


2023年4月21日金曜日

イワン・イリイチの死 トルストイ

黒澤明監督の『生きる』は『イワン・イリイチの死』をヒントにして製作されたと知り、さっそく読んだ。

しかし、話の展開が全く違う。『生きる』は主人公が癌による死を宣告され、余す期間を人のために使う話である。しかし、イワン・イリイチの死』は、主人公(上級弁護士)が無難で、品のある、上流階級の生活を送るが、新築の部屋の模様替えを行っていて、腰を打ち、それが元で、体がむしばまれて行く。死が次第に近づき、生きた屍になる。いつ残された時間を人のために使うかと思いながら読んだが、最後まで死と向き合う自分の情けなさを描いて死ぬ。自分のことを誰も分かってくれない。家族、弁護士仲間、妻、娘の嘘の言葉、世の中の欺瞞、神への恨み、治らない病の苦しみが綿々と綴られる。ここには救いはない。

死ぬ間際に「妻や子がかわいそうだ。彼らがつらい目にあわないようにしてやらなくては。彼らをこの苦しみから救えば、自分も苦しみをまぬがれる。『なんと良いことなんだろう、そしてなんと簡単なことだろう』彼は思った」と、悟りを開くが遅かった。

トルストイは死に直面する人間の救いようのない苦しみを克明に描いた。

心理小説と言っても良い。



2023年3月19日日曜日

吉村昭著『大黒屋光太夫』

 いまだかってこんなに感情移入をした本はなかった。吉村昭著『大黒屋光太夫』(毎日新聞社)である。

主人公・大黒屋とロシアに置き去りになった庄藏。二人の心の裡がまるで我がことのように胸にこみあげる。

「光太夫は、舳先の近くに小市、磯吉と無言で立って前方を見つめていた。その海の彼方には日本があり、そこに向かっているのが夢のようであった。故郷の白子浦を出航したのは十年前で、それからの歳月のことが胸によみがえる。漂流しロシア領に漂着後、苦難に堪えながら生きてきたが、その間に12名が死亡した。さらに洗礼を受けた庄藏、新蔵はロシアの地にとどまり、現在三名のみが日本に向かう船に乗っている。別れに際して庄藏は泣き叫びながら追ってきて、新蔵も最後の別れの折には磯吉にしがみついて泣いたという」同書下巻157ページ。

庄藏は凍傷で足を切断し、義足であった。光太夫、小市、磯吉がロシアのエカテリーナ皇帝に帰国を許可を得るためイルクーツクからペテルスブルグに行った。その間に庄藏と新蔵は日本に帰ることを皇帝は許さないと信じていた。ロシアで死んだ場合、ロシア正教の信者でなければ墓地に埋葬されず、墓地の外に野ざらしになると言われ、二人は改宗した。光太夫が帰り、皇帝が帰国許可をくれたことを知って新蔵は帰国したかったが、宗旨が違うので帰国を無念の思いで諦めた。

光太夫は庄藏には、許可を貰ったなどと、とても言えす、帰国当日の朝、そのことを庄藏に告げる。庄藏は唇を震わせ「連れて行ってくれ。俺も帰る」と泣き叫んだが、光太夫は庄藏を振り切って別れる。庄藏は片足で光太夫を追いかけるが雪の中に倒れる。

何と痛ましい場面か。庄藏と光太夫の気持が胸に迫る。

2023年3月8日水曜日

Not after Midnight by Daphne du Maurier

 I admit the writer is excellent in involving the reader with the story. She skillfully drives the reader to the world of mystery full of Greek myths such as Dinysus, Silenos, and satyr. She associates them with Mr. Stoll so well that the reader thinks Mr. Stoll looks like a satyr. 

However, this story is unsatifcactory. It does not tell how Charles Gordon died nor shows enough motive on the part of Mrs. Stoll to kill her husband. Also, I do not understand the meaning and significance of the title "Not after MIdnight." 

2023年2月25日土曜日

宝島  Treasure Island by Rober Louis Stevenson

 研究社出版の "Treasure Island"(市川三喜註釈)原文を全ページ書写して読了した。書写を始めたのは2020年11月朔日(most probably)あたりだから、今日2023年2月25日で二年三カ月かかったことになる。

一日の書写の量は半ページほどで、都合で書写できなかった日もあるから245ページの書写に相当時間を使ったことになる。二年も経つと、話の筋や登場人物が誰であったか混乱してきたが、とにかく書写し終えた。

主人公のJim Hawkinsのnarrationで話が展開する。読むのに苦労したのは航海用語と帆船の用語、船員同士のjargon言葉が分からない。市川三喜の注釈は懇切丁寧で例文も付け相当詳しい。(教え子の岩崎民平氏が市川氏の訳読を聞いて下書きを書き、市川氏が直した。ちなみに注釈は113ページに及ぶ)。注釈がない箇所は青空文庫の全訳『宝島』と首っきりで読んでいった。訳者は英文学者、小説家の安部知二(明治36-昭和48)氏。安部氏の全訳はよく出来ており、註釈も素晴らしい。

"Treasure Island"で際立っているのはLong John Silverだ。一本足がいい。船と宝の乗っ取りを企む、一癖も二癖もある船乗り。最後まで読者を魅了する。宝はBen Gunがの隠れ家にあったが、難破したthe HispaniolaにJim, Dr. Livesey, Captain Smollett, Bewon Gunが何日もかけて運び、Bristolの港に着く。宝は読者を満足させるだけの莫大な量がある。

Stevensonは不朽の傑作”The Strange Case of Dr. Jikil and Mr.Hyde”や”A Child’s Garden of Verses"その他を書いている。




2023年1月29日日曜日

私が愛したサムライの娘  鳴神響一

 第6回角川春樹小説賞を受賞作であるので読んだ。面白くない。

大風呂敷を広げたが、後は尻つぼみの作品。江戸幕府がフィリピンやインドネシアを支配下に置くという広大な計画を尾張の宗春が妨害する。左内は宗春の命を受けて江戸幕府を倒そうとスペイン船を頼むが、宗春が失脚し、幕府転覆の陰謀は頓挫する。

左内の指図で忍者の雪野は出島の医師ラファエル(スペイン人、自称サムライ)に仕えるが、最後は医師と阿蘭陀に向かう。

話がバラバラで視点がくるくる変わり、読みづらい。主人公は医師か左内か雪野か。本のタイトルはもともと「蜃気楼の如く」であったのが、「私が愛したサムライの娘」に代わった。蜃気楼の如く全てが水泡に帰したからタイトルとしてはこちらの方がいい。

忍者対忍者の対決描写は巧いが、またスケール大きさは素晴らしいが、後が続かない。小説としての一貫性がない。なぜ「角川春樹小説賞」を受賞したのか分からない。



2023年1月14日土曜日

お師匠さま、整いました!  泉ゆたか

 小説現代長編新人賞受賞作品であるので読んだ。応募総数1036編から選ばれた。何故これが新人賞に選ばれたのか分からない。恐らく難解な算術を教える師匠と弟子の関係、最後に寺に奉納する難解な幾何の問題とその回答方法が他にはない独自性があるからだろう。ただ、江戸時代にしては言葉遣いが現代的であり、使われている用語が明治時代以降の言葉であるのが多い。文章も稚拙で改善できるところが多々ある。

何故選ばれたか、2016年の新人賞の選考理由を読んでみたい。