2012年6月9日土曜日

ヒカダの記憶 三浦哲郎

1985年「文学界」54歳の作品

1.文章がゴツゴツしていなくスムースで読みやすい。また状況の描写が細かく書かれていて、読んでいてイメージがわいてくる。

2.ヒカダとは東北の女性がこたつの炭火で足を温めているときに焙られてできる軽いやけどのようなもの。三浦が幼いときに女風呂でいろいろな模様のヒガタを見た話が書いてある。縞、格子、市松、絣、斑模様と多種多様。三浦の母親は粗い網の目模様。夢の中で、母親かどうかをその足を見て判断したというから面白い。

3.展開:生前の母親の夢見の話から、三浦自身の夢になり、母親のヒダカのことになり、産婆が三浦を取り上げたとき、三浦の母親の足が出産の力みでヒダカがきれいに浮き上がったという。エンディングは、ほろりとさせる。「葬儀屋が母親の遺体に白足袋を履かせるてやるのに手間取っていると、着物の裾がひとりでに滑って片方の脛があらわになったのである。」三浦は「見覚えのある編みの目をしばし眺め」て昔のことを思い出す。「もう、ようござんすか」と葬儀屋が言って、葬儀屋の手がみるみるおふくろの脛を覆い隠し、お袋と一緒に、ヒダカも消えると思った。

4.最後のヒダカがこれで永久に消えるところで話が終わり、読者をほろりとさせるところが上手い。

三浦 哲郎(みうら てつお)1931年は青森県八戸市の呉服屋「丸三」の三男として生まれる。芥川賞等多数受賞 2010年(79歳没)

0 件のコメント:

コメントを投稿