昭和56年
鈴子が照代を“殺した”あたりから、話が急展開し、読んでいて息苦しくなった。さすが吉川英治文学新人賞と直木賞を取っただけの作家だ。鈴子と古宮の心理を巧みに描き、血と赤い花を色盲というトリックを伏線にして、ぐんぐん読者を引っ張っていき、最後に謎を解き明かすという恋愛推理小説。
情景描写も巧みで、文章一つ一つがよく練られている。作者独自の描き方をしていて、どこにも紋切り型の文句はない。
何気ない二人の出会いが、心中かと思わせるほどの迫力で迫ってくる。恐ろしい作品だ。
文字にこのような力があるとは。この力を最大限効果的に活用しなければ作家とは言えない。
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