2014年12月3日水曜日

地獄変 芥川龍之介

 絵師良秀の芸術至上主義により、娘が牛車の中で焼き殺される刹那、猿が火の中に飛び込んで、娘とともに焼け死ぬが、これは、ポーの「黒猫」からヒントを得たのではないか。「黒猫」では、プルートという猫が主人公の妻が殺され、壁に塗り込められるとき、一緒に塗り込められた。猿とか猫とかいう、いわゆる小道具を使って、話に現実味を出そうとしている。 見たものをそのまま芸術作品に仕上げるという写実主義は次の二つの作品に見られる。

(1)ジョセフ・ヴェルネの「難破船」の絵画に現れている。彼は嵐の真っ只中に、自分の身体を筏のマストにくくりつけてもらい、海にでて、その荒れ狂う海の姿を頭に焼き付けて、作品を仕上げた。

(2)岡本綺堂の「修善寺物語」で面作りの翁が、自分の娘が死んで行く時の表情を写し取っている。

「地獄変」も「宇治拾遺物語」『絵仏師良秀,家の焼くるを見てよろこぶ事』を題材にしている。ただ、かなり創作が入っていて、より読みごたえがある。

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