2017年7月23日日曜日

禽獣  川端康成

 小説の楽しみはプロットで、次はどうなるか、次はどうなるかと読み進み、予想が覆され覆されて、結末に進み、最後に昇華するところにその醍醐味がある。この点から考えると、「禽獣」はそういうプロットがない。ただ、主人公が小鳥や犬やミミズクやモズを飼っていてそれが死んだとか生きていたとかいうエピソードの羅列をしているだけ。言わば、随筆、日記、身辺雑記であり、回想録と言ってもいい。面白い雑記ならいいが、小鳥が死んだ生きたなどを事細かに書かれても自分とは関係のないことで少しも面白くない。テーマにしてもよく分からない。動物の死を悼むことがテーマではないようだ。千花子の話にしても感情移入していけない。  川端が「小説の研究」(昭和28.要書房)で言っているように、「この落ちがあるといふ性格は西洋の短編では切りはなされぬ特色となっている」が日本では「短編に落ちをつけることは一番嫌われることである」。こう考えると、「禽獣」も日本的短編としてはいいのかもしれないが、私の好みには合わない。

川端康成 明治32-昭和47 ガス自殺    
一歳 父没。 2歳 母没。七歳 祖母没、10歳姉没、14歳で盲目の祖父没

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